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社長がのしのしとトイレから戻ってきた。
「お疲れ様です!」
上原と松井が慌てて立ち上がるのを社長が止める。何だかすごく偉そうだ。
「うむ。ラーメンでいいな」
「えっ」
「この店はラーメンしか美味くないんだ」
「ちょっと、聞こえちゃいますよ」
「あんだって?」
社長の耳は遠くないはずだ。
「味噌と醤油、どちらか好きな方を選べ」
有無も言わさずの社長に、上原と松井はあからさまに嫌な顔をした。この二人は生き別れた兄妹か何かなんだろうか。
「……そういうパワハラが嫌で会社を辞めたのに」
上原が顔を真っ赤にしている。
「そうか。それは悪かったな。好きなの選んでいいぞ」
「えっ。良いんですか?」
上原が目を丸くした。
「三田、それぞれの希望を聞いて買ってこい」
「分かりました」
「三田さん! それは私達が」
「大丈夫。慣れてるから」
恐縮する上原と松井を席に座らせ、食券を買っていると土産コーナーをひやかしていた柴田が戻ってきた。
「私も味噌ラーメンね。味玉つきで」
「はい、分かりました。えーと、上原さんは生姜焼き定食、松井君は牛丼。社長、柴田さんが味噌ラーメンと」
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