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自分は塩ラーメンと決めている。
「来た人から食べろ」
「は、はい。有難うございます。頂きます」
上原の生姜焼き定食と松井の牛丼が先に来て、かなり恐縮しながら食べ始める。
「どうだ?」
「……微妙な味付けです」
「だろう? ここはラーメン一択なんだよ」
社長の言い方は乱暴だが、間違ったことは余り言わない。
「あ、鳴ってるぞ。ポケベル」
社長の間違いに、上原と松井が盛大にむせた。
「はい。取りに行ってきます」
「うむ。おたまもな」
「はい」
社長はレンゲとおたまを間違って覚えている。
「柴田さん、社長ってその、変わってますよね」
「そうよ。早めに気付いて良かったわね。あ、三田君待って。私も手伝うわ。一人でラーメン三つは無理でしょう」
社長は手伝う気はないらしく、ウェットティッシュで分厚い手を拭いていた。ラーメンを受け取って席に戻ると、社長は窓際の回転椅子をじっと見つめていた。以前、別のサービスエリアで回転椅子に座ってくるくる回っていた。上原と松井は塩分控えめの生姜焼きと牛丼をもそもそと食べている。
「社長、味噌ラーメンです」
「うむ」
熱々のラーメンを美味そうに啜った。
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