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「そうだよ。思ったより広そうだね」
上原がペンションの写真を数枚撮った。
「小説で知って、一度泊まってみたかったんです」
「何の小説?」
ハンモックを手で揺らしていた柴田があっという顔をした。
「ペンションなんて、子供の頃に家族で泊まった以来だなあ。絵本の世界みたいで良いよね」
松井が上原の隣に来て、懐かしそうに言った。
「ペンションと言えば密室殺人でしょ!」
松井は突然語気を荒げた上原にじろりと睨まれて、ごめんと肩をすくめて謝った。
「鍵を借りてきたぞ」
「有難うございます」
皆、お菓子の袋や旅行鞄を抱えてペンションの中へ入った。
「俺は夜中にトイレに起きるから、一階のベッドで寝る。お前達は二階の部屋を使え。外が良ければテントと寝袋もあるぞ」
柴田と上原がさっさと二階へ上がって行った。その後を松井が追いかけていく。
「テントの出番は無いんじゃないですか」
「そうか? 木下は星空観測好きじゃなかったか?」
そう言えば木下からまだ連絡がない。現場が長引いているのだろうか。
「夜は外でバーベキューだ。甲州牛のいい肉食べさせてやるからな。楽しみにしてろ」
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