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【浦嶋兄妹弟 友人編】
春日亀 誠二郎 × 今鶴 千華子の場合
「いらっしゃいませ…」
誠二郎と千華子は、街中にあるコーヒー店「ステラバックス」に来ていた。
「い…今鶴さんは、何にする…?」
誠二郎は小さい声で千華子にたずねる。
「私はー…これのトールサイズで…」
千華子は照れながらメニューを指さす。
誠二郎はメニューを確認した後、真っ直ぐと店員を見ながら言った。
「はっさくシトラス&パッションティーのトールサイズ1つと、ピスタチオフラペチーノチョコレートバージョンを1つ…」
誠二郎の大層なイケメンボイスで言い放つ。
店内は静まりかえり、一斉に誠二郎に注目した。
誠二郎の横にいた千華子は、うっとりと誠二郎を見つめる。
店員「・・お願いします…」
誠二郎「え?」
「・・・」
店員の女性も、うっとりと誠二郎を見つめていた。
誠二郎「えっと…あの、はっさくシトラスアンド…」
誠二郎は店員が正気に戻るまで、何度も繰り返し注文したのだった…。
その間、千華子は終始うっとりと誠二郎を見つめていた…。
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姫沢 亮丞 × 浦嶋 ことみの場合
亮丞「・・っ」
亮丞は、ソワソワしていた。
なぜなら、人生初めての彼女との人生初デートの待ち合わせだからである。
二人の待ち合わせ場所であるハシビロ公園前で一人胸を高鳴らせていた。
ハシビロ公園に立つ、大きなハシビロコウの銅像が目印である。
この公園の場所に大昔、大きなハシビロコウが迷い込みそれを見た村人が神の使いだと信じ手厚くもてなしたと言い伝えられていた。
亮丞は、銅像のハシビロコウに目をやるとボソッと呟いた。
「お前はいいよなぁ…堂々としてて…」
「姫沢くんも堂々としてるよ?」
「…っ!!?」
亮丞は慌てて振り向くと、そこにはことみの姿があった。
ことみは小さく微笑みながら亮丞を見ていた。
亮丞は顔を赤くさせながらことみに見惚れた。
亮丞の片想いしていたことみの従姉妹、浦嶋 ひかりに似いて、さらにはその前に亮丞が片想いしていた亀園 万莉華に似たおしとやかさのあることみは、亮丞にとって歴代片想い人を両方兼ね備えている最強彼女であった。
亮丞は思っていた。
今までの失恋は、ことみと巡り会うためだったのだと…。
「ありがとう、ハシビロコウ…」
亮丞は振り返り、ハシビロコウを見上げながら呟いた。
「姫沢くん、ハシビロコウ好きなんだねぇ」
ことみは小さく笑いながら亮丞を見た。
「…っっ」
亮丞は自分に向けられる、ことみの笑顔を見る度に胸がギュッとなる。
「ハァー…好き…」
亮丞は俯きポツリと呟く。
ことみは驚き顔を赤くすると、ギュっと亮丞と手を繋いだ。
「私も…」
ことみは照れながらチラッと亮丞を見た。
「…っっ!」
亮丞は顔を赤くさせながら驚いたようにことみを見た。
ことみは、照れながらえへへと笑った。
亮丞はことみの手を強く握り返し、つられるように照れ笑いした。
「じゃあハシビロコウさん、行ってきます」
ことみはそう言いながら、銅像のハシビロコウへ笑顔を向けた。
亮丞とことみは手を繋ぎ満面の笑顔で歩き出す。
「・・・」
"ここが、恋人の聖地になればいいのに…"
銅像ハシビロコウは、そんな事を思いながら見送った…とさ。
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浜条 海七太× 乙辺 一歌の場合
海七太と一歌は、初デートに近くにある水族館に来ていた。
「一歌さん、寒くないですか?」
海七太は一つ年上の一歌を気遣った。
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
一歌は微笑みながら海七太に言う。
「…なら…良かったです…」
海七太は少し顔を熱らせながら呟いた。
薄暗くなっている場内が、海七太にとってはありがたかった。
「それよりさ…敬語、やめない?」
一歌は海七太の顔を覗きこむ。
「…っ!」
海七太は突然近づいてきた一歌の顔に驚き固まる。
一歌は続けた。
「私たち、恋人同士なんだしさ。年上とか年下とか関係ないじゃん」
一歌はそう言うとニッコリ笑った。
「…っっ」
海七太は顔を赤くさせ俯くと、意を決して話し出した。
「俺…昔から素直になるのが、得意じゃなくて…だから…失敗するのが…怖くて…」
一歌は目を丸くしながら海七太を見つめた。
海七太は続ける。
「だから、敬語を無くすと…俺の嫌な部分が出ちゃうような気がするんです…」
すると一歌は口を開いた。
一歌「受け止めるよ」
海七太「え…」
一歌「もし海七太くんが間違えてるって思ったら、ちゃんと言う。でも絶対に手は離さないよ」
海七太「一歌さん…」
一歌「誰だって、良いところばかりじゃないよ。恋人同士って…つまりお互いを高め合うパートナーってわけでしょ?」
一歌は海七太を見た。
海七太は呆然としながら一歌を見つめている。
すると一歌は、得意げに続けた。
「言うなれば…お互いがそれぞれ、ヤスリでもあるし、原石でもある!傷つけ合って磨かれていくんだよ!」
一歌はそう言うと、ニッコリ笑った。
ギュッ…
海七太は一歌を力強く抱きしめた。
「俺も絶対に離さない」
海七太は一歌の耳元で静かに呟いた。
「…っ!!」
一歌は顔を赤くさせ目を丸くする。
すると一歌は、そっと海七太の後ろに手を回した。
「・・・」
"我々のこの場所が、恋人の聖地になればいいのに…"
水槽の中にいる笑顔のフグ達が、そんな事を考えながら海七太と一歌を見つめていたとかいないとか…。
-fin-
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