12人が本棚に入れています
本棚に追加
番外編〜はじめのデート
【浦嶋兄妹弟 編】
浦嶋 ひかり × 乙辺 竜輝の場合
ひかり(高校ニ年)は、イケメンの兄と弟を持つ活発な女の子である。
ひかり達家族は、引っ越しを機に、竜輝のいる学校へと転校して来た。
学校一イケメンで有名な竜輝とはら、同じクラスで隣の席である。
そして…偶然にも二人の家は、目と鼻の先という程に近い場所位置していた。
二人には、亀園 万莉華という共通の友達がおり、竜輝と万莉華は幼なじみであった。
竜輝は、ひかりが転校して来た当初からひかりに対して恋心を抱いており、ひかりもまた竜輝と接して行くうちに特別な感情を抱くようになっていた。
そんな二人が様々な出来事を乗り越えて、晴れて恋人同士になった。
二人が恋人になってから初めてデートの約束をした。
ピンポーン…
ひかりの家のチャイムが鳴った。
「はーい!」
ひかりは慌てて玄関に走る。
ガチャ…
すると扉を開けたのは、ひかりの兄である一匡であった。
一匡「・・・」
ひかりの一学年上である一匡は、妹大好き兄ちゃんであった。一匡がジロリと竜輝を見る。
竜輝「・・おはよう…ございます」
竜輝は少々たじろぎながら挨拶をする。
一匡「ひかりを泣かせたらシバくからな…」
一匡はさらに圧を強める。
竜輝「大丈夫です。幸せにします」
竜輝は大きめの声で言う。
一匡「…っっ!!」
ひかり「…っ!!」
両親へ結婚の挨拶をするかのような竜輝の言葉に、その場にいた一匡とひかりが目を丸くする。
一匡が震えながら言葉を失っていると、後ろからひょっこり顔を出したひかりが、照れながら笑っていた。
「…っっ!」
自分でも思いの外大きな声で言ってしまった事を自覚した竜輝は一気に顔を赤くさせた。
すると、ひかりは竜輝の手を取り静かに言った。
「私も幸せにします」
ひかりはそう言うとニッコリ笑った。
「…っ!!」
竜輝はひかりの言葉と笑顔に目を丸くさせた後、呆然とひかりに見惚れていた。
「・・・」
ひかりと竜輝は手を握りながらお互いに熱い眼差しで見つめ合った。
そこへ、弟の七央樹が コンビニから帰って来た。
「え。ちょっと…玄関で何してんの?」
七央樹がそう言いながら、ひかりと竜輝の横を強引に通りかかると、ひかりと竜輝の手がガッチリと繋がれてることに気づく。
ブンッ…
七央樹はひかりと竜輝の繋がれている手をカットした。
ひかりの一学年下である七央樹もまた、姉ちゃんが大好きな弟なのであった。
ひかり「ちょっとー!!何すんのよ!」
竜輝「…っっ」
七央樹「暑い。この場所、猛烈に暑い…ヤダ」
ひかり「え?暑くないよー?まぁ…私達の心は熱いけど…」
ひかりはチラッと竜輝を見た。
竜輝「…っ」
竜輝は顔を赤くする。
七央樹「チッ…」
ひかり「コラ!七央樹!」
一匡「チッ…」
ひかり「お兄ちゃん!!」
ひかりと竜輝の初デートは、なんとも騒がしい始まりだった…。
--
浦嶋 一匡 × 亀園 万莉華の場合
万莉華(高校二年)は、高校でも目立つ美人で物静かな女の子である。浦嶋 ひかりとは友人であり、乙辺 竜輝とは幼なじみである。
ひかりが万莉華のクラスに転校して来た際にひかりの兄でイケメン男、一匡に一目惚れをした。万莉華から告白された一匡は、万莉華が徐々に気になる存在になっていき、二人は晴れて恋人同士となった。
そんな二人は、付き合い出してから初めてのデートする日を迎えた。
「行ってきます」
万莉華が家を出ると、一匡が塀に寄りかかり待っていた。
一匡「よぉ」
万莉華は私服の一匡を見るなり胸を熱くさせた。
「お待たせ…しました」
万莉華の顔が赤くなる。
「・・・」
すると、一匡がじーっと万莉華を見ていた。
「…っっ」
万莉華は一匡の視線にたじろぐ。
「かわ…」
一匡がポツリと呟く。
万莉華「え…」
一匡「…っっ。・・かわいい…」
一匡は顔を逸らしながら静かに言った。
「…っ!!」
万莉華は驚いて一匡を見る。
一匡の耳が赤くなっていた。
万莉華の心臓がバクバクする。
嬉しさと照れで頭を埋め尽くした。
すると、万莉華の手が握られた。
万莉華は思わず一匡を見ると、ニコッと優しい笑顔を向けていた。
「…っ!」
一匡の笑顔は、万莉華が一匡に一目惚れした時の笑顔そのままだった。
万莉華は、一匡のその笑顔を見る度に恋が芽生えた瞬間を思い出す。
万莉華の心に何度でも灯をつけてくれる。
万莉華は一匡の手をギューと握りしめた。
一匡は驚いたように万莉華を見た。
すると、万莉華は弾ける笑顔で一匡に言った。
「素敵な珈琲屋さん見つけたんですけど、行ってみませんか?」
珈琲好きである一匡は、優しく微笑みながら頷いた。
二人の繋がれた手は、汗が滲むほどに固く抱き合っていた。
--
浦嶋 七央樹 × 乙辺 紗輝の場合
紗輝(高校一年)は、一学年上の兄である竜輝の妹である。兄の竜輝は同じクラスのひかりと恋人同士であり、その弟である七央樹に恋心を抱いていた紗輝。兄妹揃って同じ姉弟に惹かれる何気に仲の良い乙辺兄妹である。
七央樹はイケメンで転校して来た当初から女子に囲まれていたが、数々の困難を経て、七央樹と紗輝は恋人になった。
そんな二人は、はじめてのデートで遊園地に来ていた。
「紗輝ー、店員さんがおまけしてくれた!」
七央樹はご満悦な顔をして、二つ乗っかったアイスをベンチで待っていた紗輝に差し出した。
紗輝は一瞬モヤッとさせ、恐る恐る七央樹にたずねた。
「その店員さんって…女の人…?」
紗輝が目を逸らす。
「…っ!・・うん…」
何かを察した七央樹は、静かに頷いた。
「そ…そっか!七央樹はモテるもんね!」
七央樹の申し訳なさそうな返事に、紗輝は慌てて顔を上げ明るく振る舞った。
ギュ…
七央樹が突然アイスを紗輝に持たせ、その紗輝の手を七央樹は覆うようにして両手で握った。
七央樹「俺は他の女の人に良い顔されても、紗輝しか見えてないから」
紗輝「…っっ!!」
紗輝が驚きながら七央樹を見ると、七央樹は真剣な表情で紗輝を見ていた。
七央樹の吸い込まれるような目に、紗輝は釘付けになる。
七央樹は続けた。
「だから…その、紗希も…俺しか見ないで…」
七央樹は恥ずかしそうにする。
紗輝は目を丸くさせた。
「言っとくけど…紗輝も十分モテるんだからな!」
七央樹は口を尖らす。
七央樹の突然の子どもっぽさに、紗輝はクスッと笑った。
七央樹の真摯な無邪気さが、いつでも紗輝の不安を吹き飛ばしてくれる。
「うん…私だって七央樹しか見えてないよ」
紗輝は表情を緩ませながら言った。
七央樹も安堵した表情をさせると、二人でアイスを食べた。
七央樹と紗輝の二人は、最後に観覧車に乗った。
「今日はありがとう…楽しかった」
紗輝は遠くの景色を見ながら呟く。
七央樹は、観覧車のライトに照らされている紗輝の横顔をうっとり見つめた。
七央樹と紗輝が両想いになったあの時も、文化祭の花火に照らされた紗輝の横顔を見て胸が熱くなったのを七央樹は思い出す。
「あと、アイスの時はごめんね…。やきもち焼いた…」
紗輝は恥ずかしそうに言いながら、七央樹の顔を見た。
すると七央樹は、紗輝に顔を近づけ唇を合わせた。
「…っっ」
紗輝は驚き固まる。
七央樹がゆっくり顔を離すと言った。
「紗輝のやきもちは嬉しいから許す」
七央樹はそう言うとニッコリ笑った。
「…っっ」
紗輝は胸をキュンとさせる。
「それに、やきもち焼くのはお互いさま…」
七央樹はそう言いかけると、今度は紗輝が七央樹にキスをした。
「…っ!!」
七央樹は顔を真っ赤にさせ固まる。
「七央樹のやきもちも嬉しいから許す」
紗輝はそう言うと、ニッコリ笑った。
七央樹は紗輝の笑顔を見て、つられて笑った。
観覧車のゴンドラの中は、とても暑く感じる程だったが…そんな事は忘れてしまうくらいに、心が燃えるように熱かった。
最初のコメントを投稿しよう!