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16年前、小学6年生の時、私は隣の席の敦くんに、初めての恋をした。
ミニバスのチームに入っていてスポーツ万能な彼は、明るくてクラスの人気者だった。
そんな彼と隣の席になり、毎日話すうちに芽生えた淡い想い。
けれど、彼は小学校卒業と同時に遠くへ引っ越して、みんなと同じ中学には通わなかった。
だから、忘れるともなく忘れてた私の初恋。
「いろいろ話したいけど、仕事中は無理だろ? 時間のある時に連絡して。って、連絡先は……、そうだ、由花、連絡帳出して」
敦くんがそう言うと、ゆいちゃんは「うん!」と元気よく返事をして、自分の通園バッグから連絡帳を取り出す。
「ちさちゃん、何か書くものある?」
「あ、うん」
私は、棚からボールペンを取りながら、ドキドキしていた。
ちさちゃんって、呼んでくれた。
あの頃、女友達はみんな私のことを「ちさちゃん」って呼んでた。
でも、敦くんも他の男子と同じように知里さんって呼んでたはずなのに。
私がボールペンを渡すと、敦くんはサラサラっと連絡帳の最終ページにメモをする。
そして、そのページに折り目を付けると、器用に1ページだけ破り取った。
「俺の携帯番号とLINE ID。仕事終わったら、連絡して。今度、同窓会やろう」
そう言ってメモを手渡すと、敦くんはゆいちゃんと手を繋ぎ、「さよなら」と帰って行った。
嬉しそうにパパと手を繋ぐゆいちゃん。
いいパパなんだろうな。
なんかいいな、ああいうの。
私は、微笑ましく2人を見送る。
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