初恋の人と再会したら……

3/4
前へ
/4ページ
次へ
16年前、小学6年生の時、私は隣の席の(あつし)くんに、初めての恋をした。 ミニバスのチームに入っていてスポーツ万能な彼は、明るくてクラスの人気者だった。 そんな彼と隣の席になり、毎日話すうちに芽生えた淡い想い。 けれど、彼は小学校卒業と同時に遠くへ引っ越して、みんなと同じ中学には通わなかった。 だから、忘れるともなく忘れてた私の初恋。 「いろいろ話したいけど、仕事中は無理だろ? 時間のある時に連絡して。って、連絡先は……、そうだ、由花(ゆいか)、連絡帳出して」 敦くんがそう言うと、ゆいちゃんは「うん!」と元気よく返事をして、自分の通園バッグから連絡帳を取り出す。 「ちさちゃん、何か書くものある?」 「あ、うん」 私は、棚からボールペンを取りながら、ドキドキしていた。 ちさちゃんって、呼んでくれた。 あの頃、女友達はみんな私のことを「ちさちゃん」って呼んでた。 でも、敦くんも他の男子と同じように知里さんって呼んでたはずなのに。 私がボールペンを渡すと、敦くんはサラサラっと連絡帳の最終ページにメモをする。 そして、そのページに折り目を付けると、器用に1ページだけ破り取った。 「俺の携帯番号とLINE ID。仕事終わったら、連絡して。今度、同窓会やろう」 そう言ってメモを手渡すと、敦くんはゆいちゃんと手を繋ぎ、「さよなら」と帰って行った。 嬉しそうにパパと手を繋ぐゆいちゃん。 いいパパなんだろうな。 なんかいいな、ああいうの。 私は、微笑ましく2人を見送る。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

117人が本棚に入れています
本棚に追加