00:はじめに

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00:はじめに

「お前、それだけ小説書いてるんだから、投稿しなよ」  当時一番親しかった友人にそう言われたのは、二十七歳のある休日だった。  その時の私は、 「え~~~? 無理~~~」  と返して、お茶を濁した。よく覚えている。  数年後、私はようやっと重い腰を上げて、小説投稿を始めた。その友人とは、喧嘩別れのような状態で音信不通になっており、冗談抜きで、今生きているかどうかもわからない。 「成功体験から学ぶノウハウ」という本はしぬほどある。  だが、私は小説家ワナビ(=商業小説家志望だけどデビューできていないアマチュア)である。しかも相当性格のひん曲がったワナビである。商業作家になった人達――特にWeb小説から――の成功話を聞くのは、実はわりと耐えられない。自分の力不足、嫉妬心、無力感を盛大に煽られて、むこう半年は何も書けなくなるからだ。  それなりに交友のある方の話は勉強として正座しながら聞けるのだが、これは完全に私の性格の悪さの問題である。  成功体験がほぼ皆無の私から出せるネタ。それは「失敗談」だ。  十年近く長編投稿を続け、そして華麗に選考に落ち続けている。その体験から、 「どんな話を書けば入賞するか」  ではなく、 「どういう挙動をすれば落選するか」  という、ごっつマイナス方面からの話しかできない。  そんな話を聞きたい人がいるだろうか。疑問に思いつつ、Twitterでアンケートを取ってみたところ、「見てみたい/興味はある」と回答した方がぽつぽついてくださった。  思わず「みんな失敗談聞きたいのか……」と零したところ、フォロワーさんに、 「そりゃあ『うまくいく方法』よりも『うまくいかない方法』のが得ることが多いですもの♡」  と♡つきで背中を押していただいた。これはやるしか無い。  そんなこんななので、投稿歴洗い出しの意味も込めて、私が過去に投稿し、盛大に失敗した話を、作品ごと時系列に語ってゆきたい。ついでに作品もダイマしたい。  単純にコンテンツとして読むもよし、純粋に参考にしてもよし、「俺はこいつよりできる!」と優越感に浸るもよし。  この本を手に取ってくださったあなたのお好きなように、楽しんでいただければ幸いである。  なお、各章タイトルの年は、選考があった年度で、各作品は大体その前年に原稿を書いている。私は七~十万字の長編をみっちり一年かけて書く。そのどんくささから既に負けている気もするのだが、まあ、ここも参考までに、という話である。
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