どんぶり貸します。

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【 どんぶり貸します。 】 少し早めの時間帯の昼休憩。 何を食べようかと街に繰り出し、こんな所あったろうかと横道に入るとそんなのぼりが見えた。 「なんでどんぶり?」 思わず口に出して呟いて、店に近寄ってみる。 飲食店というわけではなく、骨董屋のようだった。 店の奥に人影はない。 押すとチーンとなる銀色のあれがあるのが見えて、呼べば出てくるらしいという事は察した。 のぼりの横に説明が貼られていた。 随分と時間が経っているのか、少々紙が焼けていた。 毛筆で書かれた内容を目で追いかける。 【レンタルどんぶり。  当店のどんぶりは特別製です。  お好きな品を作って入れると、思い出の味  ……のどんぶりが食べられます】 読みながら思わず首を傾け呟いていた。 「思い出の味の、どんぶり……?」 なんだそれ。 意味はわかるがその文章は理解しがたい。 結局作るのは自分じゃないか、とも思った。 それと共に、口が求めるのがどんぶりになっていた。 時計に視線を落とせば5分ほど経過している。 折角まだ飲食店が空いている時間だというのに、無駄な時間を過ごしたことに気づいて急いで通りに戻る。 先日この地方には出来たばかりのチェーン店の親子丼を食べることにした。 関西の友人が毎日行っても飽きない、と断言していたが好みの問題だったらしい。 俺個人の意見としてはそこまでの味ではなかった。 というより、この場合は期待値を上げすぎてしまったのだろう。 そういう味だと覚えて食べるには早くて安くて良い。 噂に聞いてたとおり美味しかったよ、と写真に添えて友人に送り仕事に戻った。
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