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「初めは怖々と暮らしていたのですが、数か月が経つと、あの部屋は完全に我が家となりました。
隣近所とのトラブルもなく、日が経つにつれ不安は減り、一生このまま家族で暮らし続けられるんじゃないかと、根拠もなく確信することが増えていきました」
人間の心理を考えると、そういうものかもしれない。何とも馬鹿げた話ではあるが、1つ大胆な行動が成功すると、どんどんエスカレートしていき、最後には何も感じなくなってしまう。
俺はポケットから煙草を取り出し、火をつけた。
「毎日会社に行く振りをして、私は仕事を探しました。いくつかのバイトやパートを掛け持ち、今では何とか生活していけるだけの収入を得ることができるようになりました。
あのアパートはすぐにお返しします。そして全てを正直に話し、罪を償います。今までの家賃は、必ず返済させていただきます。誠に申し訳ございませんでした」
男はそう言うと、深々と頭を下げた。
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