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「ここ数日、あんたの行動を見てきた。あんたは許される存在ではないが、家族はあんたを信じてる。
守るべきものがあるんなら、全力でそれを守ってもらいたい。
少なくとも、あんたの子供たちは、あんたを信頼して、愛してる。
この数日で、それが痛いほど分かった」
男はまたうなだれた。
そして身体を震わせた。
「収入の当てができたなら、ちゃんとアパートの契約者を変えて、全うに家賃を納めて、人に恥じない生き方をすべきだ。
あの部屋はあんたにくれてやる。
今までの分はもういい。
その分を、あんたの家族のために使うといい。
言っとくが、俺はあんたを許した訳じゃない。はっきり言って、あんたのことは信用できない。金輪際、俺とは関わらないでもらいたい。
ただ、あんたの家族は、俺と同じ被害者だ。その人たちまで路頭に迷わせるな。それが、あんたの償いだ」
そこまで言って、俺は席を立った。男は両拳を膝に乗せ、肩を震わせたまま動かなかった。
俺は2人分のコーヒー代を支払うと、振り返ることなく店を後にした。
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