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「いつかこの日が来るのは分かっていたでしょう?なぜこんなことをしたんですか?」
俺は頭を上げるよう男に告げ、男の言葉を待った。男は視線をテーブルに落としたまま、ゆっくりとその口を動かし始めた。
「以前は会社務めで、自分の収入でアパートを借りていました。しかし、その会社が倒産し、私は職を失いました。
小さな2人の息子を抱え、私は路頭に迷いました。家族だけはどうしても守りたかった。妻には失業したことを言えず、会社の官舎としてアパートを借りられるようになったとだけ告げました」
男の顔は青白かった。瞬きの回数は極端に少なく、生気が感じられない。男はそのまま、覇気のない言葉を続けた。
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