アパートの住人

男の話

「以前はあそこの近くにある別のアパートに住んでいて、時々散歩であの辺を歩くことがありました。

　そして、いつもカーテンが閉まってて、人気の感じられない一室を見つけました。それがあなたの部屋です。

　私は鍵穴から鍵の型と形状を調べ、自分で合鍵を作りました。そういう合鍵を作る仕事をしていたので、古い型の鍵ならすぐに作る事ができました。

　合鍵を使って中に入り、部屋を確認した後、一旦鍵を閉め、しばらく外から様子を見ることにしました。

　しかしいつまで経っても、部屋には持ち主が現れない。アパートには空室の案内も出ていない。私は数日間、１人であなたの部屋に泊まりました。しかし何の咎めも受けませんでした。私は家族を連れ、そのアパートに引っ越しました」

　そんなバカな。
　俺は半分呆れて、男の話を聞いた。