7.お手をどうぞ

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〜セレーネ視点〜 駆けて駆けて、登校してきている他の子達がびっくりするのも気にせずにアルの部屋まで全力疾走する。 アルの部屋の前で1度息を整えてから、ノックするとすぐに扉が開いてアルが顔を出した。 「はい。……セレーネ?」 僕が居ることに驚いた素振りを見せたアルはすぐに中に入るように促してくれたけれど、僕はそんな余裕無いくらいアルへの気持ちが溢れていて、目の前の彼の両頬に手を添えて勢いに任せて彼の唇に自分の唇を重ねた。 「っ!」 慌てた様子のアルが1歩後ろに下がって、すぐに離れてしまった唇に名残惜しさを感じて、また自分から彼にキスをする。 歯止めの効かなくなった想いを次から次にキスという形に変換していく。 「セレーネ落ち着いてっ」 昨日とは違って余裕が無さそうに焦るアルに僕は大きく首を横に振って無理だって抗議した。 落ち着いてなんて居られないよ! だって、好きだって気がついてしまったから。 「好きっ」 「……今、なんて……」 「だからっ!アルのこと好きなの!!僕っ、好きになっちゃったのっ」 感極まって涙が溢れてきて、固まるアルにまたキスをした。 そうしたらアルが僕の後頭部に恐る恐る手を添えてきて、口付けがより深いものへと変わっていく。 アルとのキスは甘くて柔らかくて、まるでマシュマロを食べてるみたい。 唇を重ね合わせる度に、気持ちは1段また1段と増えていく。 「本当に俺のことが好きなの?」 「大好きだよ」 「本当に?」 「もうっ、本当だってばっ」 全然信じてくれないアルに向かって頬を膨らませれば、彼が夢見たいだって震える声で言って強く僕を抱きしめてくれた。 その背後で、始業の鐘の音が鳴って二人顔を見合わせて、遅刻しちゃったねって笑い合う。 「アル、舞踏会一緒に参加していいかな?」 「パートナーになってくれるのかい?」 「……うん。アルさえ良ければ」 「勿論。セレーネに断られたら1人で参加するつもりだったしね」 そう言ってアルが僕のおでこにキスをしてきて、それに今更ながら顔を赤くするとアルが可愛いって耳元で囁いてくれた。 彼は本当に何もかも甘い。 キスも言葉も行動も、彼から漂ってくる香りですら甘く僕を包み込んでくれる。 それが居心地良くて、幸せだと思う。 「アル」 「どうしたの?」 「大好き」 「ふっ、俺も」 幸せそうに顔をゆるめてアルが笑ってくれるから、好きだなってやっぱり思う。 まだ自覚したばかりのこの思いをこれから大切に育んで行こう。 そうすればきっと、アルも僕の想いに応えてくれるって思うから。
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