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パーティ当日、美しくドレスアップしたセレーネが会場の前で俺の事を待っていてくれて、そんな彼を見つめながら本当に彼と思いが通じあったのか、と疑ってしまいそうになった。
それ程、セレーネからの告白は衝撃的で人生で1番の幸福だと思える程に忘れられない出来事だったんだ。
「待たせてごめんね」
「アルっ!……え……」
笑顔を浮かべて振り返ったセレーネが俺の姿を見て驚きに目を見開いた。まるで零れ落ちそうな程くりくりと見開かれた瞳に自分の姿が写っていてなんだか気恥ずかしくなる。
「眼鏡外してるの?」
セレーネの言った通り今日はきちんと髪もセットして伊達眼鏡も外してきていた。
セレーネの隣に並ぶのに恥ずかしくない姿で居たいと思ったし、今日は皇帝陛下と皇后陛下も来るからあんな格好をしていたら何を言われるか分かったものではない。
「陛下たちも来られるからね」
「そうだよね……」
何処か不満げに呟いたセレーネの顔を覗き込んで、変かな?って尋ねたらセレーネがそんなことないっ!って大きな声ではっきりと言ってくれた。
「凄くかっこいい!」
「じゃあ、どうしてそんなに不満そうな顔をしているの?」
「……だって……かっこいいアルを皆に見られたら取られちゃうかもしれないから……」
そう言って頬を膨らませるセレーネがあまりにも可愛らしすぎて、思わず胸を抑えて気持ちが溢れてくるのを押し留める。
今すぐにでも抱きしめてしまいたいけれど今はグッと我慢して、セレーネの頬に手を当てて、可愛いって伝えるだけにしておいた。
そうしたら、可愛くないもんってセレーネが拗ねてそっぽを向くから、そんな所も可愛すぎてクスクス笑い声を漏らした。
「僕の傍から離れちゃダメだからねっ」
「ああ、約束するよ」
「……それならいいよ……」
やっぱりまだ不満げな彼を見つめながら自然と顔が綻ぶ。
少しずつ生徒たちが集まってきて、お母様とお父様の来る時間が迫ってきた。
俺がセレーネの目の前に手を差し出す、セレーネがその手をじっと見つめる。
「お手をどうぞ、お姫様」
「へへ、楽しみだね」
そう言いながら俺の手にセレーネが手を重ねてくれて、二人笑い合いながら会場へと入場する。
隣から感じるナデシコの香りが俺を包み込む。
今日はきっと良い日になるはずだ。
だってセレーネが居てくれるから。
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