8.困り顔

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セレーネの手を取って入場すると、周りの視線が一気にこちらへと集まってきた。 「セレーネ様の隣にいらっしゃるのは何方かしら?」 「見てっ、あの髪と瞳っ……皇太子様では?」 「セレーネ様はエイデン様と恋人ではなかったのかしら?やはり喧嘩されたというのは本当だったのね」 ヒソヒソと周りが俺たちのことを好き勝手に話し始めるのを聞き流しながら歩みを進めていると、目の前から見知った人物が歩いてきて俺達は足を止めた。 「セレーネ……」 「エイデン久しぶりだね」 最初に声をかけてきたのはエイデンだった。セレーネと俺を交互に見てから微かに笑みを浮かべた。 「アルっ」 「エイデンと居るなんて珍しいな」 続いてエイデンの隣にいるノアが俺に話しかけてきた。不思議な組み合わせに首を傾げると、エイデンがそっとノアの肩を抱き寄せて、それに驚いて目を見開いた。 「今アプローチしてるところなんだ」 「そうなのか」 もうセレーネのことは吹っ切れたんだろうか。だとするなら俺も少しだけ安心出来る気がする。またエイデンにセレーネを取られたらと実は少し不安があったから。 「それよりも、やっぱりアルがアステル皇太子様だったんだね」 「騙すような形になって申し訳ないと思ってるよ」 「エイデンっ、アルにも事情が……」 エイデンが俺を責めていると勘違いしたのかノアがそう言ってくれて、エイデンがノアに分かってるよって微笑みを返した。不思議な組み合わせだと思ったがエイデンは本気でノアのことが好きな様で安心した。 大切な従兄弟を傷つけられるのは嫌だから。 「セレーネもやっと本当の王子様に出会えたんだね」 「……うん」 エイデンが少しだけ吹っ切れたような顔でセレーネに良かったねって言ってセレーネは微かに俯いた後に、顔を上げてしっかりとエイデンの目を見てから、ありがとうって返した。 それを隣で見つめながら、この2人にはきっと俺には越えられない絆があるんだと再確認して、同時にセレーネもエイデンのことは吹っ切れているんだと分かった気がした。 そうやって4人で少し談笑をしていると、皇帝皇后両陛下の入場を告げる合図が広間中に鳴り響いて、俺は気を引き締める。 お父様とお母様に会うのは本当に久しぶりで、少しだけ緊張していた。 セレーネのことをどう伝えるか頭の中でシュミレーションして、2人が入場するのを今か今かと待つ。 音が鳴り止むと、数秒の静寂の後扉が開いて2人が並びあって広間へと入ってきた。
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