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賑わいを見せていた舞踏会も終わりに近づいて、最後に皇帝陛下からの終わりの挨拶で会は締めくくられる流れになった。
「今日は参加させて貰えてとても光栄だった。君達はこの国にとってかけがえの無い存在だ。これからも努力し続け個々の才能を伸ばして欲しい」
皇帝としてのお父様はいつだって平等で心の広い方だ。いつか俺もあんな風になれたらと思っているけれど、セレーネに向けた厳しい視線を思い出すと少しだけ反抗心も芽生えてきてしまう。
お父様の挨拶が終わると生徒全員が2人に向かって決められた礼をして会はお開きとなった。
「オリビア」
帰っていく生徒の中にオリビアを見つけて話しかけると、オリビアがこちらへと歩いてきてくれる。
「どうしたんだ?」
「今から少しお父様達と話をしてくるからセレーネと一緒に居てあげてくれないか?」
俺の言葉にセレーネが、僕は大丈夫だよって返してきたけど、過保護な俺はセレーネを1人にするのが心配でもう一度オリビアに頼むって声をかけた。
「かまわないぞ」
何か事情があると汲み取ってくれたのかオリビアが了承してくれて、俺はお礼を言ってからセレーネをオリビアに任せてその場を後にした。
皇帝陛下と皇后陛下用に用意されている控え室の扉の前まで来ると1度深呼吸をしてから扉をノックして中に向かって声をかけた。
「アステルです」
「……入ってくれ」
お父様の声が聞こえてきて、その言葉に従って中に入るとお父様とお母様が寄り添う形でソファーに腰掛けて俺の事を待っていた。
お母様の心配そうな色の宿る青い瞳がじっと俺の事を見つめてくるから、何故かそれが気まずくて目を逸らした。
促されるままソファーに腰掛けると、腹の前で手を組む。緊張するとしてしまう自身の癖だ。
「……お話とはセレーネのことでしょうか」
「そうだ」
お父様の金色の瞳が射抜くように俺のことを見つめてくるから益々緊張が増してしまう。
異様な雰囲気の中、ポツポツとお父様が俺に語りかけるように話し始めた。
「アステルがずっと探していた子はミラー公爵家のご子息で間違いないのかい?」
「そうです」
即答する俺にお父様が困ったように眉を寄せる。
「……彼は駄目だ」
「……理由を聞いても?」
「彼の母親を知っているかい?」
お父様からの質問で、やはりセレーネの母親と何かあったのだと悟ったけれど、俺はその人のことを何も知らないからゆるく首を振る。
「いいえ」
俺の返答に益々難しそうな顔をするお父様の肩にお母様がそっと触れて、後は僕が話しますって伝える。
そうしたら、お父様が微かに心配そうな視線をお母様に送ったのが分かって俺は内心で首を傾げた。
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