9.僕は……(セレーネ視点)

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僕達の方に迷うことなく真っ直ぐに向かってきたアルは少しだけ強ばった表情をしていて、きっとこれから良くない話を聞かされるんだろうなって悟ってしまった。 「お待たせ。皆と居たんだね」 「おかえりなさい。途中でエイデンとノアくんに会ったから皆一緒に待っててくれたんだ」 「そうだったんだね」 僕の言葉に相槌を打った後に皆に向かってありがとうってアルがお礼を言ったらオリビアちゃんが、かまわないって返事を返した。 「お話どうだった?」 「……その件でセレーネに伝えないといけないことがあるんだ」 眉を垂れさせて困り顔をするアルを見て勘が当たったなって思ったけど、僕は笑顔でなーに?って尋ねた。 「2人で話せるかな?」 申し訳なさそうに僕以外の3人のことを見たアルにエイデンが笑顔を返す。 「確かに2人きりで話した方がいいかもな」 「……そうだね。ビア帰ろう」 「うむ。そうしようか」 「えっ!2人とも俺を置いていかないでよ」 エイデンを置いてノアくんとオリビアちゃんが立ち上がって、慌ててエイデンも立ち上がった。エイデンを無視してガゼボから出ようとするノアくんの肩にエイデンが手を置いてちょっかいをかける姿は見ていて少しだけ癒される。 「3人ともお疲れ様。ありがとう」 3人の背中にアルがもう一度お礼を言うと、3人が振り返って手を振ってくれたから僕とアルもそれに手を振り返した。 上を見上げるとガラス天井から見える空はすっかり暗くなっていてチラホラと星が姿を現し始めている。 星空の下、僕とアルはガゼボに設置してある椅子に腰掛けて対面したまま見つめ合う。アルの金色の瞳はその星空をそのまま閉じ込めたようにキラキラとしていて凄く綺麗だった。 そんな彼は迷っているのか一向に話を切り出してはくれなくて、僕はテーブルに組まれた彼の両手に自分の手を添えてから聞かせて欲しいってお願いする。 僕はアルのことが好きで、ずっとアルと一緒に居たいって思う。彼の匂いが僕の方に漂ってきてその香りを感じれば感じる程にその気持ちは強くなる気がした。 まるで彼は僕の半身。 きっと僕達が出会ったのは運命だって信じてる。 僕はアルに狂わされていて、彼もきっと僕に狂わされている。だから、大丈夫。 「良くない話だって何となく分かってるよ。でも、僕は大丈夫。何があってもアルの傍から離れたりしないって決めたから」 「……俺もそう思ってる」 アルの組まれた手が僕の手を包み込んで、その状態のままアルはポツポツと言葉を紡ぎ始めた。
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