10.再開(リュカ視点)

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アステルとミラー公爵家についての話をして直ぐにミラー公爵家宛に手紙を送った僕にアデルバード様が、本当にアデレードと会うのかい?と尋ねてきた。 「アステルと約束しましたから」 歳をとっても変わらず美しいアデルバード様の金色の瞳を見つめながら僕は微かに微笑んだ。 アステルが大事な人を見つけてその子のために一生懸命になっている姿を見るのは親としてとても嬉しいことだし、僕自身彼等の関係を応援したいと思っている。 アデレードとは昔色々な事があって、きっともう彼とは会う日は来ないとあの誘拐事件の日には思っていたけれど、まさか自分達の子供の代でこんな風に繋がることになるなんて想像すらしていなかった。 きっとこれも数多くある運命の1つなんだと、アステルが僕とアデルバード様を真っ直ぐに見据えてきた時に感じた。 「私もアステルが愛する人を見つけてくれたことは嬉しいと思っているんだよ。けれど、相手がミラー公爵家のご子息というのが問題なんだ」 「けれど、ユリウス様とアデレードの婚姻を後押ししたのはアデルバード様でしたよね」 「……確かにその通りだけどね」 公爵家は婚姻の際に皇族に報告する義務があるから、当時ミラー公爵家の跡取りだったユリウス様も何度も宮殿に足を運んでアデレードとの婚姻を認めてもらうために奔走していたと聞いている。ミラー公爵家の当時の当主様は婚姻を渋っていたけれど、皇帝陛下からの一言で婚姻を認めざる負えなくなったんだ。 僕はその当時まだ政治について詳しくはなく、そういったことには干渉していなかったからその事を知ったのはここ数年の間だったけれど。 「2人のことも認めてあげては?」 「ユリウスとは婚姻を認める際に条件付きの契約を結んでいるんだよ」 「ええ……知っています」 アデルバード様はユリウス様の婚姻を認める代わりにとある条件を提示したそうだ。それは『ユリウス様の代で産まれたミラー公爵家の子息、令嬢は皇族に嫁がせない』というものだった。 歴史を見れば、大抵の皇后が公爵家から選ばれていることは明らかで、その条件は皇族に嫁がせることで得られる利益を全て棄てろと言われているのと変わらないものだったけれど、1週間宮殿に通いつめてやっと貰えた陛下からの返事にユリウス様は迷うことなく承諾の返事を返したそうだ。 それ程までにアデレードを愛する人が現れたことを、その話を聞いた時本当に嬉しく思った。 僕は兄のことをあまり好きではなかったけれど、彼に別れを告げた日にいつか必ず幸せになって欲しいと願っていたから。 「知っているならあの二人のことは認めることが出来ないのはリュカも分かっているね?」 「分かっています。けれど、認めてあげて欲しいんです。愛する人と引き離されることの辛さは貴方もご存知でしょう?僕も誘拐された日、アデルバード様と会えなくなるかもしれないと思ったらとても辛かったから分かるんです」 僕の言葉を聞いて、アデルバード様が困ったように眉を寄せた。そうして自身のお腹の前で手を組むと悩ましげに小さく息を吐き出した。
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