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僕に縋るようにお願いってもう一度言ったアデレードの背後にユリウス様も来て、彼の両肩に手を添えると、私からもお願いしたいのって微笑みかけられた。
僕はそんな2人を見つめながら、お気持ちは分かりましたって返事をした。今の僕にはそう答える他選択肢が無いから。
「アデルバード様は納得されないと思うんです……」
僕の言葉を聞いて、アデレードが少しだけ目を伏せた後に、その伏せられた瞳がぎゅっと固く閉じられた。
その仕草がまるで祈っているようだと思った。
それからゆっくりと開かれた瞳には何かを決心した様な色が浮かんでいる気がした。
「リュカ……僕はずっとリュカに会いたいと思ってた。あの時のことを謝りたい気持ちも勿論あったけれど、リュカが僕に一番星を見つけろと教えてくれたからユーリに会うことが出来たって伝えたかったんだ」
「……そうなんだね……」
「愛する人との間に出来た可愛い我が子には幸せになって欲しいと願ってしまうのは、高貴な方でも罪人でも同じなんだ……。子供は親を選べないから」
僕にもその気持ちが痛い程に分かる。そして同時に過去を悔いて雁字搦めになっているアデレードのことを、もう許してあげなければいけないと思った。
「アデレード兄さん」
最後に彼とお別れした時、彼のことを兄と呼ぶのはあの日が最後だと思っていた。
けれど、今この瞬間僕は彼を再び兄と呼ぼうって自然と思えたんだ。
きっとこれは子供達が繋いでくれた縁で、僕達の関係をやり直す最後のチャンスの様な気もする。
「僕は貴方を許します」
「……リュカ……」
「だから、子供達が笑っていられるように協力しよう」
僕はそう言って彼の目の前に手を差し出した。
それをアデレードがじっと見つめる。
「……本当に何も変わらないんだな。お人好しで、甘ちゃんで……、眩しいくらい真っ直ぐなやつ……」
そう呟きながらアデレードがくすりと笑って僕の手をそっと自分の手で握り返してくれた。
その手の温かさは昔彼と手を繋いだ時よりも少しだけ冷たい気がした。
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