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「それではまたお会いしましょう」
「うん……気をつけて」
話を終えると2人に挨拶をしてミラー公爵家を後にした。いつもお喋りなユリウス様が今日はアデレードを見守るようにあまり言葉を発しなくて、それが2人が思いあっている証にも思えて微笑ましく思えた。
馬車に乗り込むと緊張が一気に溶けて全身から力が抜ける。ラナが飲み物を手渡してくれてそれを口に含みながらホッと息を吐き出した。
戻ったらもう一度アデルバード様にアステルのことをお願いしてみよう。
「……ラナ」
「はい」
「アデレード兄さんは元気そうだったよ」
「リュカ様もどこか吹っ切れたご様子で安心致しました」
「うん。ありがとう」
馬車に揺られながら、彼と繋いだ手の温もりを思い出す。
きっとアステル達が結ばれればこれから少しずつ彼とも関わる日が増えてくるだろう。それはとても嬉しいことだと今は素直に思った。
アデルバード様が反対する気持ちも分かるけれど、彼にも少しでもアデレードが変わったのだと理解して欲しい。
人の罪は決して消えることは無いけれど、償うことはできるし、それにアデレードはもう充分償ってきたはずだ。だから、その業を子供にまで背負わせる必要なんてないから。
「早くアデルバード様と話がしたいな」
呟いた言葉にラナが分かってくださるといいですねって微笑んでくれた。
だから僕も、そうだねって彼女に微笑み返した。
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