11.条件

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次の日、支度をしているとノック音が聞こえてきて扉を開けた。そうしたら、セレーネが扉の前に立っていて、俺は笑顔でおはようって挨拶をした。 毎日、一日の始まりに一番最初にこうしてセレーネと顔を合わせて挨拶を交わす。そうして一緒に教室まで向かう。このなんでもないような日常が特別で幸せな一時だ。 「お母様から手紙が届いたんだ」 校舎へと向かいながら手紙のことについて話を切り出した。 「なんて書いてあったの?」 「俺とセレーネの2人で宮殿に来て欲しいって」 「そうなんだね。……うん、わかったよ」 いつもみたいに笑顔で返事を返してくれるセレーネの手を取って、無理してない?って尋ねる。 そうしたらセレーネは首を振りながら、大丈夫だよってまた微笑んでくれた。 「結局僕は中々帰る機会がなくてお母様には会えてないんだ……色々聞きたいことはあるんだけど」 「そうだよね。俺の両親に会った後に予定が合えば休みの日にでも一緒にセレーネの実家に行ってみうか」 「いいの?」 俺の言葉にセレーネが驚いた表情をして尋ねてきたから、頷き返してあげた。 そうしたらありがとうってセレーネが俺の腕に抱きついてきて、ふわりとセレーネの香りが舞った。 「相変わらず仲がいいね」 声をかけられて振り返るとエイデンがこちらへと近寄って来ていて、おはようって挨拶をした。 最近エイデンは少し雰囲気が変わった気がする。前までは優しい誠実な感じだったけれどその中に妖艶さやイタズラっ子の様な物が含まれ始めている気がするんだ。 「今日はノア君は一緒じゃないんだね」 「喧嘩しちゃったからさ〜」 「その内ケロッと顔を出すさ」 「だといいけど」 そういえば3人で学校へ行くのは初めてだと気がついた。前まではセレーネのことでエイデンとはあまり仲がいいとは言えなかったから、これからは少しずつ仲良く出来ればいいと思う。 セレーネは学年が違うため階段の所で別れて、エイデンと2人並んで歩く。 珍しい2人組なこともあって周りの生徒からの視線が痛かった。 「セレーネとはどう?」 「なかなか難しいよ」 「そっか」 「俺が支えてあげないと行けないんだって分かってるんだけど上手く行かないものだな」 「アルはまだまだセレーネのことが分かってないよな」 「……というと?」 「セレーネは守られるだけの子じゃないってこと」 そう言って階段を一気に駆け上がったエイデンは、まあ、頑張れって言って自分のクラスへと歩いていく。 俺はその後ろ姿を見つめながら、エイデンの言った言葉の意味を考えていた。
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