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お父様の条件通り、セレーネは1週間経った後から宮殿へと皇后教育を受けに行くようになった。
疲れた顔をしているセレーネを見ると助けてあげたいのに何も出来ない悔しさと心配で胸がいっぱいになる。
「最近セレーネとは一緒じゃないんだ?」
廊下を歩いているとエイデンに話しかけられて足を止めた。
「彼は皇后教育と勉強で忙しいから」
「なるほどな。心配?」
「勿論。青い顔で今にも倒れそうだから見ていて不安になるよ」
俺の返事にエイデンはふーんって生返事を返してきた。それに首を傾げると、大丈夫だろって返される。
「セレーネは追い込まれないと力を発揮できないタイプだから」
「……エイデンはセレーネのことならなんでも知ってるんだな」
その事に少しだけムッとする。
彼のことを1番分かってあげられるのは自分でありたいと思うのに、エイデンの方がセレーネと過ごしていた時間が長いからどうやっても彼には勝てない。
「アルだってノアの事はなんでも知ってるだろ?」
「……まあ、な」
「それと同じだろ?だから、セレーネのことは俺が教えてやるからアルはノアのことを俺に教えてくれたらいいよ」
「ふっ、分かったよ」
それが狙いだったのか?ってふと思ったけどセレーネのことを教えて貰えるなら俺だって助かる。
セレーネが一生懸命頑張っているのを支えてあげたいけれど、俺にはどうしたらいいのか分からなくて1人じゃ力不足だと感じていたから。
「とりあえずどうしたらいいと思う?」
「うーん。甘い物でも差し入れてあげればいいんじゃない?」
「……それだけ?」
「それだけで充分だよ」
そう言って笑うエイデンに分かったって答えて、お礼も伝えた。
今日は帰りにお菓子を買って行ってあげよう。
エイデンの言う様にそれでセレーネが喜ぶなら毎日だって彼の好きな物を持っていく。
「頑張れよ」
「ああ、助かる」
少し歩いた所で別れて、俺は図書館へと向かう。
エイデンは良い奴で、彼となら良い関係を築いて行けそうな気もする。
図書館に着くと、遠くの方にセレーネの姿が見えて話しかけようと近づいてみたけれど、必死に本の文字を目で追っているのを見て話しかけるのを止めた。
きっとエイデンの言う通りなんだと思う。
支えてあげないとって思っているけれど、セレーネは俺が思うよりも強くて頑張り屋で、守られるだけのお姫様じゃないんだ。
図書委員専用のカウンター席に座ると遠くからセレーネの背中を眺める。
「……俺も頑張らないとな」
セレーネがあんなに頑張っているんだから、俺も成績を落とす訳には行かないと強く思った。
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