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結局、会ったらなんて構えては居られなくて、次の日の朝にセレーネの部屋へと彼を迎えに行った。
「アル!」
驚いた顔で扉から顔を出したセレーネにおはようと挨拶を返す。
跳ねている髪を整えてあげて、微かにくまが出来ている瞼を指で撫でた。
「迎えに来てくれて嬉しい」
「最近あまり一緒に過ごせていなかったから」
「うん、寂しかった」
「ねえ、セレーネ勉強のことなんだけど」
「え?……あの、僕なりに頑張ってるけど中々上手くいってなくて。大丈夫だよ!僕絶対いい成績にしてみせるからね」
「うん。セレーネならきっと出来ると思う。でも、俺にも手伝わせてくれないか?」
「……え」
頑張っているのを知っているから手伝いたいんだ。一緒に勉強すればきっとセレーネだけじゃ解決出来ないことも助けてあげられると思うから。
それにセレーネだけが婚約のために頑張るなんておかしい。俺とセレーネ2人で頑張らないと。
「……一緒に勉強してくれるの?」
「最初からそうしてれば良かったって思ってるよ。セレーネだけ頑張らせてごめん」
「……ううん!嬉しいっ!!アルが手伝ってくれるならもっともっと頑張れる」
花が咲きほこるみたいに笑ってくれるセレーネのことを思わず抱きしめた。
本当に彼は凄い。
セレーネの額にキスを1つ落として、大好きだよって囁いた。
そうしたらセレーネも大好きって返事を返してくれる。
鞄を部屋から取ってきたセレーネと共に登校すると、いつも通り階段のところで別れる。
彼の後ろ姿を見つめながら、その背中の逞しさに思わず笑みがこぼれた。
「おはよう」
「エイデンおはよう」
「何かいい事あった?」
「セレーネは凄いって噛み締めていたんだ」
「やっとわかったか」
「ああ」
すっかりエイデンと教室に向かうのが恒例になってしまった。
彼と最初にあった時は恋敵だったのに、今や悪友だ。
「ノアとはどうなってるんだ」
「んー、中々難しいよね」
「……そうか」
2人が上手く行けばいいと思うけれど、中々そう上手くは行かないのだろう。
エイデンと別れて、席に着くとテキストを開いて書き込んでいく。
セレーネのためにセレーネの学年のテキストを用意したんだ。それに要点を書き込みながら、全員が幸せになれればいいのになってつい思ってしまった。
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