12.頑張り屋

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放課後、セレーネと待ち合わせをして図書館へと向かった。今日は委員の仕事は休みだからセレーネと並んで一般生徒用の席に腰掛けた。 「あのね、ここが分からなくて」 テキストを広げて分からない所をセレーネの細い指が指す。その問題を確認して、頭の中でどう教えるのかを整理する。 「これはこの計算式を当てはめて」 「こう?ん?あれ計算が……ちょっと待ってね……」 「ゆっくりで大丈夫だからね。そうそう、それでそこに……うんうん、合ってるよ」 俺の話を聞きながら一生懸命問題を解いていくセレーネの横顔を盗み見る。 彼の青い瞳が真剣な色を帯びていて、どうしようもなく愛おしく感じてしまう。 試験までもう時間は無い。 それに今回の試験が終わってもまた次がやってくる。俺が卒業するまでに少なくとも後3回は試験があるんだ。それら全てでセレーネは上位の成績を納めなければならない。 それがどれ程大変なことなのかというのを王太子である俺はよく分かる。 「ねえ、アル」 「なに?」 「僕、絶対皇帝陛下や皇后陛下が認めてくれるまで諦めないよ。だから、アルも僕がやりきれるように見ていてくれる?」 「勿論だよ。見ているだけじゃなくて、セレーネが困った時は何時だって手を貸す」 「えへへ、アルが支えてくれるなら絶対大丈夫だね」 そう言って微笑んでから、またテキストへと視線を戻したセレーネのふわふわの髪を撫でた。 「2人で頑張ろう」 「うん!」 それからはセレーネに聞かれたところを一つ一つ説明していき、彼が分かるまで何度も同じ問題を解き直したりもした。 そうこうしているうちに外は暗くなっていて、もう帰らなければならない時間になっていた。 「そろそろ帰ろうか」 「……そうだね」 少しだけ不満げな顔を浮かべるセレーネに、まだ勉強したかった?って尋ねたら首を横に振ったセレーネが俺の方を見て眉を垂れさせる。 「もっとアルと一緒に居たかったなって思ったんだよ」 セレーネは恥ずかしそうに俯くと、テキストや筆記具を鞄へと仕舞って、行こうって俺の手を引いてきた。 そんなセレーネを思わず引き寄せて、彼の唇に自身の唇を重ね合わせる。 「アル!?」 「セレーネ……愛してる」 本気でそう思うんだ。 彼をこの腕の中に閉じ込めておきたい。 「もう、アルってば恥ずかしいよ」 そう言いながらも嬉しそうに笑うセレーネに俺はもう一度キスを捧げた。
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