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あれからセレーネは約束通り、試験で上位の成績を収めていた。
試験期間中は毎日、夜遅くまで一緒に勉強をした。朝は、眠いね、なんて言い合って登校することが当たり前。
そんな学生生活もあっという間に過ぎ去り、俺とエイデンは無事卒業の日を迎えた。
「寂しくなっちゃうね」
盛大な卒業パーティーが開かれる会場内で、俺の傍らに居るセレーネが、少し悲しそうにそう呟く。
いつもの変装をやめて、皇子として卒業パーティーに参加している俺のことを、周りの生徒がちらちらと見てくる。
それぞれが、思い出話に花を咲かせる中で、俺もこの学園に来た当初のことを思い出していた。
今でも、セレーネと恋人になれたことが夢のようだと思える。
「いつでも会えるよ」
「そうなんだけどね。やっぱり学園で会えないのはつまらないよ」
頬をふくらませるセレーネが可愛くて仕方ない。
「アル!」
名前を呼ばれて振り返れば、オリビアとノアがエイデンと共に俺達の方へと歩いてくるのが見えた。
「卒業おめでとう」
「ありがとうノア、オリビア」
潤んだ瞳で祝いの言葉をくれるノアとオリビアにお礼を伝える。
「これからが大変だな」
「お互いな」
エイデンに手を差し出されて、握手をすると、笑みを浮かべ合う。
ここに転入してから、色んなことがあった。振り返れば、なんだかんだ楽しかったと思える。
明日からは、お父様の仕事を手伝いながら、皇子としてもっと深く国政に携わっていくことになる。大変だが、やりがいはあるだろう。
それに、セレーネも傍に居てくれるから頑張れる。
「セレーネ、皆、本当にありがとう」
「·····アル」
ポロリとセレーネが涙を零した。
そんなセレーネを優しく抱きしめてやる。
周りが俺達のことを見ているけれど、関係ない。
「セレーネ愛してる。君が卒業したら俺と婚姻してくれるか?」
「うんっ!嬉しい」
お父様から出された条件をセレーネは見事に達成してくれた。本当に尊敬する。
柔らかなプラチナブロンドの髪を撫でながら、この一瞬を噛み締めた。
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