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内心で苦笑いしながら本を読む。カバーで隠しているけれど、ホラー小説だ。悪霊に襲われた家族が知恵と勇気で悪霊と戦うストーリー。なかなかハラハラする展開に胸が高鳴る。お父さんがエクソシストと一緒に悪霊と戦って、
とんとんと肩を叩かれた。ちょっと今、いいところなんだけどと振り返ると同級生の男子、風間真琴[かざま・まこと]が苦笑いしながら言う。
「お楽しみなところ悪いんだけど、Bluetoothイヤホン、電池切れ? なのかな? 音漏れしてるよ」
「え!?」
女の子らしくない声が出て、スマホを見るとそこにはガンガンで垂れ流しの怪談朗読の声。それも長編の名作だったので、周囲を見て見ると苦笑い混じりに笑っていて。
「いやぁーーーー!!」
悲鳴をあげて本を投げ捨て、スマホの電源を切って教室を飛び出した。聴かれた。バレた。ずっと秘密にしてたのに!! あんなに注目されて、そもそも女の子が怪談、怖い話を朝っぱらから教室で聴いているなんて恥ずかしすぎる!! 赤面しながら廊下を走り、運動音痴ゆえの息切れですぐに減速して息を整えて、もう一度、あの光景を思い出してしまう。
「江見さん、江見さんっ!! ちょっと待って、予想より足、早い、って」
と息切れしながら追っかけてきたのは、風間くんだった。片手には私の本が握られている。はうっと息が止まりそうになった。
「やっと追い付いた」
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