ドキドキ

2/8
前へ
/8ページ
次へ
内心で苦笑いしながら本を読む。カバーで隠しているけれど、ホラー小説だ。悪霊に襲われた家族が知恵と勇気で悪霊と戦うストーリー。なかなかハラハラする展開に胸が高鳴る。お父さんがエクソシストと一緒に悪霊と戦って、 とんとんと肩を叩かれた。ちょっと今、いいところなんだけどと振り返ると同級生の男子、風間真琴[かざま・まこと]が苦笑いしながら言う。 「お楽しみなところ悪いんだけど、Bluetoothイヤホン、電池切れ? なのかな? 音漏れしてるよ」 「え!?」 女の子らしくない声が出て、スマホを見るとそこにはガンガンで垂れ流しの怪談朗読の声。それも長編の名作だったので、周囲を見て見ると苦笑い混じりに笑っていて。 「いやぁーーーー!!」 悲鳴をあげて本を投げ捨て、スマホの電源を切って教室を飛び出した。聴かれた。バレた。ずっと秘密にしてたのに!! あんなに注目されて、そもそも女の子が怪談、怖い話を朝っぱらから教室で聴いているなんて恥ずかしすぎる!! 赤面しながら廊下を走り、運動音痴ゆえの息切れですぐに減速して息を整えて、もう一度、あの光景を思い出してしまう。 「江見さん、江見さんっ!! ちょっと待って、予想より足、早い、って」 と息切れしながら追っかけてきたのは、風間くんだった。片手には私の本が握られている。はうっと息が止まりそうになった。 「やっと追い付いた」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加