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「な、何か、いや、その私のことを笑いに来たんですか?」
「え? いや、違うよ。江見さんが落とした本を早く届けようと思って、笑うって、あ、ちょっとごめん。全力疾走したからちょっと休憩!!」
ごめんと言いながら風間くんがはぁーと息を吐く。はいっと差し出された本。私はおずおずと手を伸ばして受けとる。
「ぶしつけな質問だけど、江見さんって怖い話が好きなの?」
こういうのは卑怯だと思う。本を届けるついでに質問。これは答えなければならなくなる。卑怯だぞ。風間くん!!
「ちょっとだけ、怖い話はとってもドキドキするから好き」
「えー、俺はホラー映画とか、心霊番組って絶対怖くてみれねーもん。すげーな江見さん。尊敬する」
「そ、尊敬されるほどのことじゃ、それにホラー映画や心霊番組と違って、朗読には読み手さんなりのこだわりや息づかいがあるので、ちょっと違うと思います」
ホラーは子供の頃から好きだった。ホラー映画が好きな父の趣味に付き合っていたらいつの間にかホラーや怪談が好きになっていて、話し方講座や仲良しグループに上手く入れる講座をYouTubeで探していたら偶然、広告として再生されたのが始まり、怪談を語る人達の魅力にどっぷりとはまった。
「え? そうなのか。うーん、ちょっと違いがよくわかんねーけど、なんか江見さんが好きなのはすげー伝わってきたわ。うん」
ニコッと風間くんが笑った。
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