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屈託のない笑みに私は驚く、彼は私の趣味のことをバカにするつもりなど最初からなかった。純粋に心配して追いかけてきてくれた。
「そ、そうかな」
「うん。やっぱり好きなことを話すのはすげー嬉しい気持ちになるなぁーと思ってさ。俺もサッカーするけど試合の話や有名な選手のことをついつい自慢したかなるしさ」
おそろいと風間くんが笑う。おそろい。一緒か。
「でも、今度からはしっかりイヤホンの電源、入ってるか確認しとかないね」
「うん。気をつける」
よろしいと風間くんが言って、ほらと私に手を差しのべてくる。きょとんとしてると風間くんが言う。
「教室に戻ろ。大丈夫、江見さんのこと悪く言うやつがいたら俺がびしって言ってやるからさ」
「大丈夫だよ。そのもう少ししたら落ち着くから一人で行くよ」
だから大丈夫だよ。風間くんだけ先に戻ってていいよ。
「そっか。まぁ、いきなりは無理だよな。ならさ、江見さんが落ち着くまで俺もここに居ようかな」
「ダメだよ。もう少しで授業も始まるし、私なんて」
「私なんては禁止!! むしろ、女の子を追いかけておいて一人で帰ってきたら俺ってすげーカッコ悪いじゃん」
「そ、そうだけど」
困った。どうしよう。困る。このまま教室に帰るには気まずいし、かといって風間くんが折れる様子もない。むーっと内心で唸る。
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