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肩がぶつかるほどの距離に風間くんが座る。どうやら風間くんはBluetoothイヤホンを知らないらしい。離れても大丈夫だよと言えば、なんだか嫌だから離れてと拒否してそうなので私はドキドキしながらスマホを操作して、怪談朗読を再生させる。
風間くんは初心者なので、聴きやすくそれほど怖くない短い話を選ぶ。それから無言で怖い話を聞く。時折、隣を見れば慌てたり、びっくりしたり、ほっと一安心する風間くんがいる。コロコロと表情が入れ替わっていく。
私のオススメの最高に、いや、最恐に怖い話を聴かせたらどうなるかな? 私の中の小悪魔な部分がけひひひと笑ってやれやれと背中を押してくる。ごめんね。風間くんと内心で謝りながら最恐の怖い話を再生させた。
聞き慣れた好きな語り手が語っていく。隣をちらりと盗み見れば風間くんがわぁーと冷や汗をかいている。その表情がちょっとだけかわいらしくて私はずっと見ていたくて、怖い話がクライマックスを迎えた瞬間だった。
「ひゃあ!!」
風間くんが悲鳴をあげて、どんっと私に抱きついた。ドキドキと心臓の鼓動が聞こえそうな距離、驚いて私は横に倒れた。
風間くんがいる。キスしそうなほど近くて、耳にしたイヤホンからは怖い話が流れていて、ドキッ、ドキッと心音が高鳴る。勢いで風間くんに押し倒された。誰かに見られたらきっと誤解されてしまう。
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