0人が本棚に入れています
本棚に追加
ほんの数秒の時間だった。ごめんと言って風間くんが離れてていく、ほんの少し抱きしめられただけなのにドキドキが止まらなくなっていく。
「江見さん」
「な、なに?」
「怖いから手を繋いでてくれる」
「それ女の子が言うことじゃないの?」
「江見さんってちょっといじわる!!」
「いいよ」
手を差しのべて、手を繋ぐ、風間くんの手のひらが私の手を包み込む。怖いのかちょっと震えていて、キョロキョロと辺りを見渡している風間くんがおもしろくてそっと耳元にふーっとしてみる。
「え、江見しゃん!! そうとこ!! そういうところがダメ!! ダメだと思う!!」
噛み噛みになりながら風間くんが真っ赤になりながら言う。怖くて、おもしろくて、いつの間にか病みつきになっていく。
「じゃあ、やめる?」
「や、やめない。なんだか病みつきになりそう」
「うん。わかるよ」
「だけど、一人じゃ怖いから江見さんも一緒!! いいよね!? ね?」
「うん。一緒がいいね」
ドキドキしながら風間くんを見ていた。教室の騒ぎを知った担任の先生が空き教室に来るまで私と風間くんはずっと手を繋いで怖い話を聴いていた。それが怖い話を聴いているからドキドキするのか、それとも男の子と初めて手を繋いだからなのかわからなくて。
ギュッと心臓が締め付けられそうな苦しさを感じながら私は今日も風間くんにオススメの怪談をさがしている。
「今日もドキドキしたいな」
きっとそのドキドキの理由を知るのはもう少し。
最初のコメントを投稿しよう!