1.予想外すぎる、この出会い

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「えー恋愛してみればいいじゃない、三次元で」 「かっ……簡単に言わないでください……!拓人先輩!」 「動揺しちゃって、かーわいいー」 「かっ……からかわないでください……!」    香澄の頼れる先輩の八島拓人は、生物学上は男性だが、女性の心理を誰よりも理解している存在。  そのためか、彼の手から紡がれるセリフやシチュエーションは、どれも大きな説得力がある。  香澄は、そんな八島が紡ぐシチュエーションの全てに憧れている。  いつか自分も八島のようなシナリオを書けるようになりたいと、矢島が担当したシーンだけの研究ノートを1冊作り勉強していた。  だからこそ、八島のアドバイスは、基本的にはどんなものでも聞き入れたいと香澄は思っていた。  けれども……。 「そもそも私みたいなコミュ障に恋なんて、素っ裸でボス戦挑むようなものじゃないですか!」 「そうは言うけど、香澄ちゃん。私とはちゃんと会話できてるじゃない。自分でコミュ障って、諦めてんじゃないの?」 「先輩は、話しやすいだけですからです!それに今は顔が見えないから……」 「あら、じゃあ今すぐ顔を見ながらお話する?」 「絶対無理です」 「困ったわねぇ……」  スピーカー越しに八島がため息をつくのを聞きながら、香澄はまたやってしまったと頭を抱えた。  誰かが自分のためにアドバイスしてくれたことでも、真っ向から否定する癖が香澄にはあり、そのせいで、これまで何人もの友人たちとの仲が悪くなったのだ。   「何よ、悩んでるって言うから力になろうとしたのに。香澄ちゃんなんてもう知らない」  という捨て台詞を吐かれたことは1度や2度ではなかった。   「ごめんなさい……先輩……」  急いで香澄が謝ると 「私は良いけれど……」  と、ワンクッションを置いてから八島はこう言葉を続けた。 「ねえ香澄ちゃん。私、ディレクターさんが言うことは間違っていないと思うわ」 「どう言うことですか?」
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