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「ルームサービスを、お持ちしました」
「ああ、ご苦労さん」
ところがスタッフは、料理の乗ったワゴンをどんどん部屋に押し入れてくる。
ビジネスホテルの狭い室内の奥に、父親を押し込んでくる。
「おい、やめねえか!」
そこで父親は、息を飲んだ。
やけに背の高い、体格のいい男が、ワゴンを押すスタッフの後から入って来たのだ。
「誰だ、てめえ! 勝手に人の部屋に入ってくるな!」
ワゴンのスタッフは、背の高い男に言った。
「哲哉さま。玲衣くんは、この部屋です」
池崎と哲哉が、玲衣を救いにやって来たのだ。
哲哉は、無言でドアをロックした。
そして、怒りを抑えた声で、言い放った。
「玲衣を、返してもらおう」
「……お前、神森だな!?」
父は、探偵の調べで知った、玲衣の落札者の名を口にした。
1000万円で、ぽんと人買いをする、富豪。
玲衣を買い上げた、名家の男。
そこで、毛布を蹴って玲衣が声を上げた。
「哲哉さま!」
哲哉は、とっさに玲衣を見た。
赤く腫れた、頬。
涙に濡れた、瞳。
「貴様、玲衣に何をした!」
哲哉は、我を忘れて父に殴りかかっていた。
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