第一章 二人の出会い

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第一章 二人の出会い

 深夜、神森 哲哉(かみもり てつや)はジンの入ったグラスを傾けながら、パソコンのモニターを眺めていた。  映っているのは、求人サイト。  個人が自分をアピールし、それに興味を持った企業がアクセスする、といったものだ。 『20歳、男性。第二性はベータです。体力には、自信があります!』 『22歳、男性。第二性はベータです。手先が器用と、よく言われます』 『25歳、男性。第二性はベータです。営業職をやっていました』  表情のない顔つきで、それらを流してゆく哲哉の目に、ようやく留まった人物は。 『18歳、男性。第二性は、オメガです。よろしくお願いします』  哲哉は少し身を乗り出し、マウスを操作した。  キーボードで裏コードを入力し、アクセスする。  するとモニターには、先ほどの少年の全身像が映された。  ただそれは、全裸だ。  表向きは、求人。だがその正体は、人身売買を扱う闇サイトだった。 「白石 玲衣(しらいし れい)、か。悪くない」  入札額には、現在500万円とある。 「こんなに美しい商品に、500万とは。不景気だな」  哲哉は、玲衣に1000万円と入力した。  これでまず間違いなく、彼を落札できるだろう。 「新しい玩具が、手に入るぞ」  氷を鳴らし、哲哉はジンを飲み干した。
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