第一章 二人の出会い

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 モデルを終え、服を着ている怜の傍に、一人の男が現れた。 「初めまして。池崎です、よろしく」 「あ、初めまして。僕、白石 玲衣です」 「僕は、この屋敷の管理を任されているんだ。君のお世話も、ね」 「よろしくお願いします」  池崎は、髪を短く整えた、30代後半の快活な男だった。  第二性は、ベータ。洋裁から重機の操作まで、何でもこなせるオールマイティーな人間だ。  では、と、そんな池崎は玲衣を部屋へと案内した。  玲衣に与えられた個室は、部屋ひとつなのに実家一軒分より広かった。 「すごい……」 「バス、キッチン、書斎。全て揃っているので、気兼ねなく使ってね」 「はい」  その広さにも驚いたが、部屋を飾る美術品の美しさにも玲衣は心奪われた。 「きれいな花瓶ですね」 「お屋敷の庭に花が咲いているので、好きなように飾っていいよ」 「素敵な香炉」 「お香は好き? 何種類か持ってくるよ」  そして玲衣は、壁を彩る絵画の前に足を止めた。  それは白いカンバスだったが、純白ではなかった。  いろいろな明度彩度の白が、複雑に塗り込まれているのだ。 「面白いですね」 「それに気づくなんて。君には哲哉さまに、気に入られる素質があるね」 「気に入られる、なんて……」  あの、少し怖い哲哉に自分が気に入られる、とは考えられない玲衣だ。
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