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「ぐッ、あ! や、めろぉ!」
「この、下衆が!」
あまりの哲哉の剣幕に、池崎も玲衣も呆然とした。
容赦なく、殴る。
頭部を、顔を、腹を。
「実の子に、こんな! お前など、玲衣の父親である資格はない!」
「哲哉さま、もう。もう、この辺で!」
胴にしがみつき、池崎が止めに入る。
息を荒げ、哲哉は父を睨みつけた。
無残に鼻血を流している、薄汚れた男。
だが、まだ減らず口を叩いてきた。
「親が。親が自分の子どもを、どう使おうと勝手だろぉ!」
この言葉に、哲哉は逆に殴られたようなショックを受けた。
『私の所有物をどう扱おうと、私の勝手だ』
過去に、言い放ってきた自分。
冷たい仮面のような表情で、眉ひとつ動かさずに。
(私は。私は、この男と同類だったのか)
「哲哉さま」
哲哉の意識を引き戻したのは、玲衣の声だった。
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