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5
覚醒するように目を覚ました僕は森の中の川沿いでリュックを横に寝転がっていた。一瞬、何が何だか分からなかったけどすぐに状況を思い出す。
「――そうだった。やっと水を見つけて……。昔の夢見ちゃってたな」
意志に関係なく出てきた溜息を口から吐き出してからまだ疲れが残る体を起こす。出来れば動きたくないと思いながら両方の目頭を指で押さえる。
すると足音が聞こえ僕は警戒しながら顔を上げた。
だけどその警戒はすぐに静まった。森から出てきたのはただの犬。やせ細りどこか悲し気な表情をした犬だった。顔を俯かせて地面の匂いを嗅いでおり僕に気が付いているのかは分からない。
「何だ良かった。――ほら。おいで何もしないよ。あっ! そうだ」
僕はリュックからジャーキーを取り出すとそれをまだ距離のある犬に差し出す。
「食べる?」
その匂いを嗅ぎつけたのか犬は地面の匂いを嗅ぎながらこっちに近づいてきた。
だけど数歩近づいたところで足を止め僕の方へ顔を向ける。
そして僕の顔を見た途端、先ほどまでの表情から一変し歯を剥き出しにして唸り声を上げ始めた。
「ご、ごめん……」
それは今まで嫌という程に向けられた敵視の目。このままだと襲い掛かられる。そう思った僕は急いでリュックを背負って立ち上がった。
「これ置いておくね」
僕は言葉とジャーキーを置いて刺激しないように犬の方を向きながらゆっくりとその場を離れた。
そして森の中をまだ疲労の残る足で歩き始める。疲労が残っているにはいるけど、やっぱり水を飲めて少しだけ休憩も出来たおかげ大分楽にはなっていた。
「僕の読んだ本だと何人か仲間がいて楽しく会話しながら旅をしてたのに……。はぁー」
別に一人が苦手というわけでも、嫌いというわけでもないけれどこういう状況だと少し寂しいかな。
でも仲間はいない。それが現実。今の状態じゃ仕方ないって分かってるけどやっぱり溜息ぐらいは出るよね。
そんなことを考えながら森を更に歩いていると気が付かぬうちに魔物と出くわしてしまった。飛んでるガルラが三匹と犬っぽいドッガ五匹か。戦う気分じゃないけれど、この森に入って来た人が襲われるかもしれないし。
「はぁー」
また溜息が零れる。もう何度目だろう。
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