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 だけど魔物は今にも襲い掛かりそうで、僕も剣に手を伸ばして引き抜き先手必勝で突っ込む。そんな僕に合わせるように一匹のドッガが飛び掛かってきた。  だけど冷静に剣を一振り。それで一匹目を仕留めるとそれを皮切りに残りの魔物との戦闘も始まった。この剣の見た目は初めて見た時と同じ。  だけどあの時と違ってこの剣を握ると重さは全然感じないし、何よりまるで幾多の戦闘を経験してきたかのようにどう戦えばいいか分かる。体も自分の物じゃないみたいによく動く。以前だったら魔物一匹でさえも危険だったけどこの剣を使えば複数の魔物でも……。 「ふぅ。片付いた」  難なく倒すことが出来る。そしてあっという間に全てを倒し切り剣を仕舞おうとしたその時、まだ生きていたドッガが一瞬で起き上がると隙を突いて飛び掛かってきた。 「わっ!」  あまりの驚きに声を上げながらも体は冷静だと言うように剣を振りドッガを上下に斬り分けた。そのおかげで一瞬にして込み上げてきた驚という感情が無くなり平常心になる頃にはドッガは倒れ脅威は無くなった。 「ふぅー。危なかったなぁ」  そして胸を撫で下ろしながら僕は手に握る剣へ視線を向けた。たまにこの剣が怖くなる。今みたいに自分の意志とは別で動いている気がして。僕の無意識によるものならまだいいんだけど、もしこれが剣か何かの力で勝手に動かされているなら、いつか魔物以外も傷つけてしまうかも。  そう思うとこの剣が怖い。そんな僕の気持ちなんて知らん顔の剣はどこか不気味に笑っているようで僕は隠すように鞘へ納めた。剣が鞘に収まるのと同時に魔物死体は風に吹き飛ばされる灰のように消えていった。それを見届けた後に僕は再び歩き出す。  森の終りはそこから少し歩いた先にあったけど、そこにはどこまでも続く草原が広がっていた。見ているだけで歩き疲れる程に終わりの見えない草原。僕はとりあえずポケットからコンパスを取り出した。これは(名前は覚えてないけど)何とかコンパスっていうどういう原理かは分からないけど目的地を覚えさせるとそこを指してくれる物。  そして今、僕が向かっているのはソリドラ洞窟。そこにいる魔王の手下を倒してこの剣の欠けた力を取り戻さないといけない。ソリドラ洞窟には数いる魔王の手下の内の一人がいるらしい。  その魔物を倒す。それが今の僕の目的。 「自信ないけど、行くしか選択肢はないか……。――よし! 行こう」  言葉だけでも気を引き締めると僕は足を踏み出してソリドラ洞窟へと歩き出した。             世界中に嫌われながらも          それでも魔王を倒し世界を救おうとする        フィリブ・アルナートの旅はまだ始まったばかり……                                                     ―完―
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