白くて細い、項

17/18
前へ
/19ページ
次へ
「……はぁ?! 何だよそれ。 凄ぇ、ムカつく!! ──あー、もうっ、何なんだよ。 何やってんだよ瑠風。ちゃんと拒否れよ!」 「……っ、」 沸き上がる感情をそのままに、踏み込んだ事を言い放つと、瑠風の肩がビクンと跳ねる。 「………俺の事、好きなんだろ……?!」 瑠風の前に膝立ちし、頼りなく細い両肩を強く掴む。眉根を寄せ、真っ直ぐ見つめれば……眉尻を下げた瑠風が、潤んだ瞳を揺らしながらゆっくりと俺を見上げる。 鎖骨に刻印された、キスマーク。 それを、掴み上げた襟口で覆い隠しながら。 「……うん」 恥ずかしそうに首を少し傾げて俯けば、襟足から露出する──白くて細い項。 その項が、心なしか薄らとピンク色に染まっていて…… 「──!」 ドクンッ── 『俺なら、我慢できねぇわ』──瞬間脳裏を過る、山岡の声。 呪いの様に感じていたその台詞が、ずっとざわざわしていた俺の心に、ひとつの答えを導き出す。 ドクン、ドクン…… ……ああ、クソ。 そうだよ。 俺も我慢できねぇよ……! 『男』だとか『女』だとか……んなの関係ねぇ。 肝心なのは、『由利恭平』として『結城瑠風』をどう思ってるか……だろ。 「……俺も、だ」 言葉にした途端、そこから現実を帯びていく。 煩い程に暴れる心臓。 頬が、やけに熱い── 「俺も……瑠風が、好きだ……」 その言葉に、瑠風が顔を上げる。 大きく持ち上がる瞼。 涙で滲んだ大きな瞳が、零れ落ちそうな程見開かれて── 堪らず抱き寄せれば、瑠風の華奢な身体が、すっぽりと俺の腕の中に収まる。 まるで、欠けていたピースが埋まるかのように。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加