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「……はぁ?! 何だよそれ。
凄ぇ、ムカつく!!
──あー、もうっ、何なんだよ。
何やってんだよ瑠風。ちゃんと拒否れよ!」
「……っ、」
沸き上がる感情をそのままに、踏み込んだ事を言い放つと、瑠風の肩がビクンと跳ねる。
「………俺の事、好きなんだろ……?!」
瑠風の前に膝立ちし、頼りなく細い両肩を強く掴む。眉根を寄せ、真っ直ぐ見つめれば……眉尻を下げた瑠風が、潤んだ瞳を揺らしながらゆっくりと俺を見上げる。
鎖骨に刻印された、キスマーク。
それを、掴み上げた襟口で覆い隠しながら。
「……うん」
恥ずかしそうに首を少し傾げて俯けば、襟足から露出する──白くて細い項。
その項が、心なしか薄らとピンク色に染まっていて……
「──!」
ドクンッ──
『俺なら、我慢できねぇわ』──瞬間脳裏を過る、山岡の声。
呪いの様に感じていたその台詞が、ずっとざわざわしていた俺の心に、ひとつの答えを導き出す。
ドクン、ドクン……
……ああ、クソ。
そうだよ。
俺も我慢できねぇよ……!
『男』だとか『女』だとか……んなの関係ねぇ。
肝心なのは、『由利恭平』として『結城瑠風』をどう思ってるか……だろ。
「……俺も、だ」
言葉にした途端、そこから現実を帯びていく。
煩い程に暴れる心臓。
頬が、やけに熱い──
「俺も……瑠風が、好きだ……」
その言葉に、瑠風が顔を上げる。
大きく持ち上がる瞼。
涙で滲んだ大きな瞳が、零れ落ちそうな程見開かれて──
堪らず抱き寄せれば、瑠風の華奢な身体が、すっぽりと俺の腕の中に収まる。
まるで、欠けていたピースが埋まるかのように。
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