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「──なんかね、救われた気がしたの。
その時かな。恭平の事、もっと知りたくて。……離れたくなくて。
同じ学校に、行きたいなって」
「……」
どうやら瑠風は、願書を受け取った俺が職員室から出ていくのを偶然見かけたらしい。その時、俺の持っていた封書の学校名をこっそり確認したんだとか。
「恭平の志望校が、純くんの住むアパート近くの高校だと解った時……凄く迷ったよ。
このままだったら、純くんと一緒に住む事になるんだ……って」
「……」
「……そしたら、いずれ純くんと……」
言葉を濁した瑠風が、膝の上に乗せていた手をキュッと握る。
その拳が、小さく震えていた。
「想像したら……嫌だなって。
あんなに純くんの事が好きで。純くんの事しか見えなくて。
……キスも、それ以上の事もしてきたのに」
大きな瞳が小さく揺れた後、伏せられる。
「でも、恭平と別々の学校になるのは……凄く嫌だった。
離れてる間に、僕の事なんて忘れて……恭平に彼女ができたら、嫌だなって。
……凄く、悩んだよ。
最後まで、どうしようって」
「………」
「それで……気付いたの。
僕は、恭平の事が………好き、なんだって」
瑠風の頬が赤らむ。
恥ずかしそうに俯いて俺から顔を背ければ、襟足の長い髪の間から、白くて細い項が見えた。
「……でも……」
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