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……ドクン、ドクン
伝わる体温。速い心音。
柔らかくて仄かに香る、甘い匂い。小さな息遣い。
俺の内側から、瑠風を想う気持ちが込み上げ……溢れて止まらない。
──もうこれ以上、瑠風を苦しませたりしねぇ。
純って野郎に、指一本だって触れさせねぇよ──!!
「瑠風」
抱き締める手を緩めれば、俺の声に反応した瑠風が、澄んだ瞳を真っ直ぐ向ける。
「俺ん所に、来い」
瑠風の二の腕を掴み、澄んだ瞳を捕らえながらそう言えば……俺を見つめる大きな瞳が潤み、大粒の涙がポロッと溢れ落ちる。
「………で、でも」
震える声。
不安げに瞳を揺らしながら、縋りつくように俺の着ているシャツの裾をそっと掴む。
「俺も一緒に、お前の従兄弟を説得するからさ」
「……」
「な?」
「……うん」
安心したように、瞳が緩む。
甘え縋るその表情は、今まで見た事ない程可愛くて。色っぽくて。愛おしくて。
まるで……俺だけに懐いた、子猫のよう。
「もう、泣くなって……」
「……ん、」
次々と溢れ、頬に伝い流れる涙の跡を指で拭えば……間近で瑠風と目が合う。
ドクンッ──
一瞬で、変わる空気。
壊れないよう、そっと瑠風の片頬を包み込む。緊張で指先が震えているのに気付いたのだろうか。涙で濡れた長い睫毛を、瑠風が静かに下ろす。
ドクン、ドクン、ドクン──
今までにない、高揚と緊張。
引っ張られたシャツから伝わる、指先の震え。
「……」
熟れたような赤い唇に、唇をそっと寄せれば……鼻先三寸の距離で、お互いの熱い吐息が交差する。
溢れる愛おしさ。昂っていく想い。
それらが混ざり合うのを感じながら、薄く瞳を閉じ……
俺を待つ唇へと向かって、その距離を詰めた。
END
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