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……とは言ったものの。
瑠風の姿が視界に映る度、トクトクと心臓が早鐘を打ってしまい。
「……」
この感情が一体何なのか。……俺にも、よく解らない。
女みたいだな……と思った事なら、何度もある。
だけど、そんな風に瑠風を意識した事なんて、今まで一度もなかった。
………山岡に言われるまでは。
「……ごめんね」
放課後。
スーパーで特売があるからと、瑠風に荷物持ちを頼まれた帰り道。突然降り出した雨に打たれしまった。
「あー、別に。気にすんなって」
玄関先でフェイスタオルを受け取りながら、笑顔でそう返す。
……でも、まさか。
このタイミングで、瑠風の居候先のアパートに上がる事になるなんてな……
髪とその他を軽く拭いた後、タオルを首に掛ける。買い物袋を両手に持ってキッチンへと運べば、瑠風が申し訳無さそうに目を伏せた。
「……あの、さ。シャワー使って。その間に、制服乾かしておくから」
「──、!」
……ズクンッ
『俺なら、我慢できねぇわ』
山岡のせいだ。
あいつが変な事言うから……勝手にヘンな想像しちまっただろ。
「……お、おぅ」
ざわざわした気持ちを無理矢理抑え、手渡された着替えを持って、脱衣所へと向かう。
清潔感のある白い洗面台。
スタンドに交差して立つ、二本の歯ブラシ。
ひとつは青。もうひとつは白。
居候というよりも、同棲してますオーラが漂って見える。
そう言えば。
瑠風の従兄弟……美人って言ってたよな。瑠風が言う位だから、相当な美人なんだろう。
そうだ。今度、吉田に言ってやろう。
凄ぇ見たがるだろうな、あいつ。
濡れたシャツとパンツを脱ぎ捨て、バスルームのドアを開けた。
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