扉の向こう

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 こうなったら自分で解決するしかない。俺は深呼吸をし、解決策を模索する。  ひとまず警察だ。警察をここに呼び出さなければいけない。だが、先ほど不動産屋は、一度利用が始まった部屋には入れないと言っていた。つまり、いつも俺が利用している玄関に呼んでも仕方がないということだ。ならばどうすればいいか。もしかして、本来のこの建物の玄関からなら入れるのではないだろうか。僅かな可能性ではあるが、試してみる価値はある。  であれば、と俺はスマホの地図アプリを起動する。GPSで現在地が分かるはずだという俺の期待はあっけなく外れ、アプリはエラーを示した。不動産屋は場所を探るな、と言ってはいたが、物理的に調べることができないようにしてあるようだった。まぁ確かに、場所が割れたら利用者とのトラブルが発生するかもしれないしな。  さておき、俺は再び考え込む。それなら、この部屋に何かしらの手がかりがないだろうか。俺は部屋の中を一通り見回しながら考える。住所が分かるような、例えば、そう、免許証。  俺は死体に手を合わせた後、その体を探る。運よく、ズボンのポケットから財布が見つかった。頼むと念じながら財布を探ると、中から目的のものが見つかった。  俺はすぐに警察に連絡を取った。アパートの住人を装い、最近隣室から腐ったような臭いがすること、その部屋の住人をしばらく見ていないことを伝え、電話を切った。  これで警察が駆けつけてくれれば、きっと解決するだろう。あとの問題は、ここに俺がいたらまずいということだ。  俺は死体にもう一度手を合わせる。どうか無事に解決しますように。そう祈った後、俺は荷物を持って部屋から出るべく玄関に手をかけた。  扉を開けると、そこにはいつもの外の景色はなかった。  玄関のその先は、違う部屋に繋がっていた。
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