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もう、どうにでもなれと思っていた。
自暴自棄。捨て鉢。捨てたいのは、自分。自分の全部。
自分を徹底的に汚して、貶めて、無価値なクソみたいな人間になり果てたかった。こんな酷い目にあうのに相応しい人間に。
手始めに肺でも汚してやろうかと、28になるまで一度も吸ったことのない煙草を買ってみた。――1本目でむせにむせて、あとはジップロックに入れて引き出しに仕舞った。
犯罪まではしたくない。する勇気もない。
だから、次に選んだのは、彼女のいる会社の先輩の誘いにのり、ベッドインすることだった。
丁度よいヨゴレ具合ではないだろうか。
妻子がいる上司とではシャレにならない、彼女のいない同僚とではヨゴレが足りない。
ただ、シラフではそんな泥すら被る踏ん切りがつかない。思ったよりも「心のリミッター」は強固だった。
リミッターを外す手軽な方法……酒の力を借りる。
……そういった流れで、清水雪緒は暗くて静かなバーのカウンターで、会社の先輩である高見に肩を抱かれていた。
「清水、飲みすぎだなぁ」
そうは言いながらも、制止する気配はない。苦い、煙草の臭いが、その言葉に纏わりついている。
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