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「でも親は? そんな簡単に納得しないでしょ?」
雪緒が尋ねると、郁があっ、と声を出し、
「ああそうそう。――祐輔のこと。姉貴から連絡来て、めちゃくちゃ動揺した。でも、あれ、ありがとう。ちゃんと、お礼言わなきゃなって思ってた」
その言葉で、咲との話を思い出す。――あのとき、咲は楽しそうに……とまではいかないが、薄っすら笑っていたんだった。
「あの後、姉貴と直接話して。家のこととか、仕事のこととか……もろもろ。あんなに姉貴としゃべったの、めちゃくちゃ久しぶりだった。……それで、両親と、俺ら姉弟とで話した。俺はアールスプーンの令嬢とは結婚できない、他に好きな相手がいる、後継者から外してもらって構わないって」
歩道で足を止めそうになって、雪緒は郁に手を引かれる格好になった。
「……そんなこと、ご両親が……」
特に、義母が許すはずがない。一瞬で胃のあたりが重苦しくなる。
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