きみに伝えること

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 だが、郁は雪緒を安心させるように笑ってみせて、 「姉貴がね。自分がやるって。――姉貴は渋々秘書してたんだけど、元々は経営のほうをやりたかったんだって。兄貴がやるのはまぁ仕方がないと思ってたらしいんだけど、兄貴がいなくなって自分にチャンスが回って来た! と思ったら、自分は全くスルーされてアホな弟が候補になって。勘弁ならなかったんだって凄んでさ。ずっと、仕事のあと、経営勉強したくてビジネススクールに通ってたらしいんだよ。家族も誰も知らなくて。雪緒さんが声かけた日も、あの後スクールだったんだって」  あのとき、咲は『味方になる』と言ってくれていた。  それは、そういう意味での味方……だということ? 「俺が跡を継ぐなら、自分は会社辞めて、独立してやっていくつもりだったって言ったら、さすがに親も黙り込んでさ。多分、親のほうにもいろいろ打算もあったと思うよ。俺を経営のメインから外すことで、アールスプーンに対しても面目が立つとかね。――で、もうここでついでに爆弾投下しとけと思って、俺が好きな相手は兄貴の元奥さんだって言っちゃった」 「……えっ!」  今度こそ、雪緒は足を止めた。
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