きみに伝えること

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 歩道の脇を、若い女性が追い抜いていく。  愕然とした顔の雪緒を面白そうに見て、 「そんな驚く? どうせいずれは言わないといけないじゃん?」 「そ、そうなんだけど……まだ、心の準備ができてなかった……」 「まぁ、母親は血管切れそうになってたよ。それは予想通りだったからいいんだけど、父親のほうがさ、驚いてはいたけど、仕方ないなって反応で、こっちのほうがびっくりした。――縁談ぶち壊れたせいで、もうバカな次男のことはどうでもよくなったのかもね」  けろりとしてそう言うと、雪緒を促して歩き出す。  雪緒は深々と息を吐いて、足を進めた。  舅が強く反対しなかったのは……咲に聞いた話が、関係しているんだろうか。  郁の反応を見たところでは、咲も過去の話まではしなかったようだ。  あの話……舅の過去の話が影響しているとして。舅は理解してくれたとして。そうだとしても……きっと、これから姑に関わる厄介ごとは、覚悟しておかなければいけないんだろう。
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