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でも、私もあれから多少は図太くなった。
郁くんも、絶対私をフォローしてくれると信頼している。
そう考えながらも、気の重さが顔に出ていたのだろう、郁が身を屈めるようにして、
「前、マンションでうちの母親と会っちゃったんでしょ。美智さんに聞いた。――嫌な思いさせてごめん。これからはないようにする。姉貴も、雪緒さんが母親と会わなきゃいけないときは、自分も同席するから呼べって言ってたから」
「……わかった」
姑と、仲良くなれるとは思わない。
でも、折り合いをつけてやっていくしかない。
あの姑がいても、あれだけ責められても……郁のことは諦められなかったから。
話しているうちに、目的のスーパーに着いた。
カートを押しながら、品物を選ぶ。
普段一人でしていることが、郁とあれこれ話しながらすることでやけに楽しい。
――ただ、そろそろはっきりさせないといけないことがある。
雪緒は山積みになったキャベツの前で、口火を切った。
「……夜ごはん、うちで食べていく……?」
と郁に尋ねる。小声になった質問は、店内に流れる軽快な音楽に紛れて聞こえなかったようで、郁が首を傾げ、
「え、何て言った?」
「……夜ごはん、どうするかなと思って。――あの、ほら、うちで食べていくなら、1玉買うし、帰るなら半分の買おうと思って」
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