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キャベツを指さす雪緒に、郁はぱっと嬉しそうな顔をして、
「いいの? 食べたい」
と言って相好を崩す。その蕩けそうな笑みにしばし目を奪われ、慌てて手前にあったキャベツを掴んでビニール袋に入れる。
郁くんて、こんなだっけ……。
もっと、とんがったところがあった気がするんだけど。
カートを押しながら、野菜コーナーを歩いて心を落ち着かせる。
もしかしたら、郁としても身を守るために被っていたものがあって。それが剥がれ落ちて、中身の……人懐こい部分が露わになっているんじゃないだろうか。末っ子特有の、甘え上手なところが。
だとしたら、長子の弱いところを思いきり刺激してくる、きっと。
つい世話を焼いてしまう自分の姿と、そんな自分が嫌いじゃないと思う未来がぼんやりと見えて、やっぱり自分に郁はちょうどいいんだと思えてしまう。
普段は面倒で作らないロールキャベツにしようかと、そのほかの野菜や挽肉を買い、明日からの平日に備えて卵や食材を買う。
『荷物持ち』がいるので、保存用の豆乳やペットボトルのお茶なども多めに買って、二人はスーパーを出た。
「重いでしょ。大丈夫?」
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