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【 2 】
「もう、いきなりキレちゃダメじゃん。恵の悪い癖だよ?」
隣で俺の手を握りながら早足で生徒会室へと向かう恵こと東雲恵の顔を見ながら、さっきの出来事を思い出す。
昨日いきなり転入生が来るって生徒会顧問の先生から聞いたんだけど、まさかあんなこと言われるなんてね?びっくりしたよね。
「……伊月の前でキレてしまったことは謝りますが、あの転入生にキレたことを謝るつもりはありません。」
「うん、それは全然いいんだけどさ、恵が悪く思われたら俺嫌だな、」
「……私は大丈夫です。何かあれば拳で解決しますので。」
「出た。恵の脳筋思考〜」
恵はたまに拳で、とか蹴りで〜とか言うからきっと強いんだろう。
まあ、さすがにあの転入生くんが言ったこと俺もちょっとカチンと来たんだけどね。
恵は小さい時からパパさんとママさんが厳しくて、将来のためにも周りに愛想良くするようにしつけられたらしくて、それは高校三年生になった今でも恵を縛る足枷になってる。
だからあの転入生くんにも愛想良く笑顔を向けたんだろうけど、どうもそれを指摘されちゃったんだよね。
恵が気にしてることを真っ先に指摘した転入生くん恵はよく思わないだろうな〜。
あと少し失礼な態度だったし、あれは翔が見たら怒るだろうなぁ。
あ、自己紹介がまだでした!
俺は橘伊月、二年生で生徒会の補佐してま〜す。(補佐のほうが何かと都合がいいので変更させていただきました!)
隣の彼は友達の東雲恵。同じ生徒会役員でっす!しかも副会長!すごいよねぇ。俺だったら絶対できない。
さっきの話から分かると思うんだけど、俺達(というか恵)は昨日転入生くんが来ることを聞かされて、案内役に抜擢されたんだけど、何があってもいいようにって翔から一緒に行くように頼まれて、そしたら案の定あんなこと言われるから、ホントに着いて来て良かったって思った。
「……すみませんでした、伊月。目の前でキレたりして…………」
シュン……って恵がちゃんと謝ってくれる。
本当は優しくて良い人。
「だからいいんだって!もうこの話はおしまい。ほら、生徒会室ついたよ!」
「ああ、本当ですね。さっさと残ってる仕事終わらせましょうか」
「うん、そうしよ!」
さっきまで握っていた手を離して、俺たちは生徒会室へと足を踏み入れた。
中では翔、葵、愁、春、秋が仕事をしていて、俺たちが入ってくるのを見て動きを止めた。
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