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動揺
「……。」
彼女の家に入ると見えてきたのは紙がばら撒かれた部屋だった。
びりびりに破られた紙、よく見たら割れたガラスの破片も落ちている。
絶句した。
『ね、結構汚いでしょ。』
彼女はへへっと笑った。
「……。
まぁね。でもゴミの種類が少ないし、比較的掃除しやすいゴミだからすぐ済むんじゃないかな。」
僕は何を言っているんだ。
部屋の様子が想像と違って動揺しているのが自分でもわかる。
おかげで変なことを口走ってしまった。
顔には出てないだろうけど、動揺していることがバレたかもしれない。
ー、そっと彼女の方を見ると彼女はよくわからない顔をして僕を見つめてきた。
優しいような、怖いような、悲しいような、嬉しいような、苦しいような、思い当たる感情が頭の中を駆け回るが結局はどれにも当てはまらない気がして、欠け落ちていくだけ。
不安で胸がざわめく。
僕の知らない彼女の事がまた増えた。
また、遠くなった。
『そうかな?』
「う、うん。 …そうだよ」
僕たちは、危ないからとたまたまあったビニール袋を手にかぶせて部屋全体を片付けていった。
『終わったね。』
「うん。お疲れ」
『お疲れさま』
「疲れたんじゃない?」
『まぁね、でも手伝ってくれたからそんなに疲れてないよ。』
「うん。僕が掃除したって言っても過言じゃないっていうくらい頑張ったからね。」
『私だって頑張ったよ。』
「そうだね。」
『適当』
「そんなことないよ。」
『そう?』
「うん。」
『今から勉強する?』
「ううん、今日は疲れたからまた今度にしよう。」
『わかった。
結局片付けを手伝ってもらっただけになっちゃった。』
「いいよ、別に。
でも、手伝ったお礼もプラスして1週間くらい勉強見てもらいたいんだけど」
『えーーー、』
「嫌?」
『まぁ、いいけど』
「場所、変える?」
『ううん、せっかく掃除したし。』
「それもそうだね。」
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